動かなかった体、性暴力の苦しみ 刑法の見直しに被害者が考えること
塩入彩
《大変なことになった》
《抵抗しなきゃ》
そう思ったが、「これは性暴力だ」とわかればわかるほど、体は動かなかった。
2012年冬。池田鮎美さん(41)には忘れられない記憶がある。
当時ライターとして働いていた池田さんは、雑誌の取材のため、取材先の男性が運転する車に乗った。
外は猛吹雪。男性は「ちょっと物を取りに行かなきゃ」と言って、道をそれた。
方向感覚がわからなくなる中、男性は急に車を止めた。
「お願いがあるんだけど、キスしない?」
それまで仕事の話をしていた相手の突然の性的な言葉に、頭が混乱した。
「困ります」と伝えたが、男…