高齢者無理なく労働いきいき 菓子製造「恵那川上屋」が大臣表彰
高齢者を積極的に雇用し、働きやすい職場環境をつくっている企業を選ぶ「高年齢者活躍企業コンテスト」で、岐阜県恵那市の菓子製造販売業「恵那川上屋」=キーマーク=が、厚生労働大臣表彰の最優秀賞を受賞した。65歳定年制と希望者全員の70歳までの再雇用制度、さらに70歳からは年齢の上限を設けず一定の条件を満たせば再雇用している点などが評価された。
「自分の体力に合わせて働くことができ、同年代の仲間もいて楽しい」
勤続21年目を迎えた渡辺れい子さん(70)は話す。2交代制だったセラミックス工場が移転後、パート社員として働き始めた。現在は1年ごとの契約で、週5日、1日あたり5・5時間の勤務だ。名物の栗きんとんを手でしぼる作業などにあたる。「毎日充実していて時間が過ぎるのが本当に早い」と笑顔が絶えない。
何歳でも生き生きと
コンテストは独立行政法人の「高齢・障害・求職者雇用支援機構」と厚労省の主催。37回目の今回は全国から74社の応募があった。
同社は、2017年に正社員の定年を60歳から65歳に引き上げた。希望すれば全員を70歳まで再雇用する制度も導入。70歳以降は一定の基準を満たせば年齢の上限なく再雇用している。
同社総務人事部の清見賢一部長は「働きたい人には何歳になっても生き生き働いてほしい」という。
高齢者が多いパート社員は、評価制度や時給制度を3クラスに分けている。技能の向上と職場への定着を促す狙いだ。65歳の定年以降は、年1回の面談の結果や本人の意思、人事評価などを踏まえて再雇用の可否を判断している。
「1日7時間で週3日」や「1日5時間で週4日」といった短日勤務や、短時間勤務を取り入れている。製造や販売部門では、高齢社員が対応しやすい早朝に始業時間を設けるなど生活に配慮した勤務態勢にしている。
機械化で負担軽減
また、製造部門で栗の包装を機械化するなど、各職場で高齢社員の負担軽減を図る。昨年から閑散期を利用して始めた約5万本のトマト栽培では、座ったまま収穫・移動できる作業車を導入した。昨年12月に入社し、トマトの販売などを担当する浅野幸子さん(75)は「若い人からパワーをもらいながら楽しく働かせてもらっている。働くことが生きがい」と話す。
鎌田真悟社長は5日にあった表彰式で、「高齢者は知識と経験をいっぱい手に入れている。それを生かしてみなさんを幸せにするために会社を大きくしていきたい」と抱負を述べた。(松永佳伸)
◇
〈恵那川上屋〉 創業は1964年で、栗きんとんをはじめとする栗菓子を中心に製造販売する。新規事業として、ポリフェノールが豊富な栗の皮を粉末にして菓子に練り込んだり、農家から出た規格外の野菜をジュースやペーストにしたりして加工する事業を年内にも始める。社員は318人で、60歳以上が47人と約15%を占める。最高齢は79歳。
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。