国民年金の保険料納付「64歳まで」5年延長へ 国が本格検討を開始
国民年金(基礎年金)の保険料を支払う期間について、厚生労働省は現在の40年間(20歳以上60歳未満)から5年延長し、64歳までの45年間とする方向で本格的な検討に入った。想定以上のスピードで少子化が進んでおり、将来受け取る年金の水準が下がるのを防ぐねらいがある。今月から制度の見直しに向けた議論が始まり、2025年の法改正をめざす。
公的年金は2階建てで、国民年金は「1階部分」にあたる。国内に住む20~59歳のすべての人が加入し、原則40年間、保険料を支払う。会社員や公務員はこれに加えて「2階部分」の厚生年金に加入し、受け取る額も上乗せされる。
国民年金の保険料は現在、月1万6590円。40年間支払うと月約6万5千円の基礎年金を受け取る。納付期間が5年延びると、国民年金だけに入る自営業者や短時間労働者、無職の人などは保険料負担が増える。ただその分、将来受け取る年金額も増加する。厚生年金は原則70歳未満であれば保険料を支払うため、60歳以降も働く会社員などは今回の見直しによって追加の負担は生じない。
延長を検討する背景の一つに、基礎年金の水準が今後、大きく低下する課題がある。19年に年金の将来の見通しを示す財政検証をした結果、厚生年金の水準は、現役世代の平均手取り収入に対するモデル世帯の年金額の割合(所得代替率)が約30年後に今より約2割低くなる一方、基礎年金では約3割減まで落ち込むことがわかった。その後もコロナ禍で少子化がさらに加速しており、受け取る年金の水準はさらに下がる恐れがある。延長案は、現役世代が減る中で、財政の「支え手」を増やす狙いもあり、厚労省幹部は「次の制度改正で最も取り組まないといけない議論だ」と話す。
ただ、課題も多い。受け取る…

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