第16回「嫌な予感がする」世界経済に迫る節目 バブル崩壊せぬ中国のゆがみ

有料記事中国共産党大会2022

聞き手・西山明宏
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 5年に1度の中国共産党大会が終わり、習近平総書記(国家主席)の3期目続投が決まりました。側近を重用する一方、経済に通じた幹部らを退任させる露骨な人事も注目されました。米中対立や経済の停滞が続く中、習氏の語る「経済の質の高い発展」を今後、達成することは出来るのか。中国経済に詳しい日本国際問題研究所の津上俊哉客員研究員に話を聞きました。

 つがみ・としや 1957年生まれ。日本国際問題研究所客員研究員。専門は中国経済、現代中国論。80年通商産業省(現経済産業省)入省、在中国日本大使館で参事官も務めた。近著に「米中対立の先に待つもの グレート・リセットに備えよ」。

 ――今回の習氏による政治報告をどう見ましたか。

 一言で言うと、新味がありませんでした。5年前の党大会報告をベースに、去年発表した第14次5カ年計画を加味して、偉大な中華民族の復興に向けて邁進(まいしん)していく、貧困を撲滅して「豊かになる」課題は達成した、これからは「強くなる」「新時代」だと連呼する。「そういう節目の重要な時期だから、自分が3選される必要がある」と暗示する中身です。

 二つの文書が語ってきた「物語」が3選に向けた大仕掛けになっているので、修正はしにくかったのでしょう。

 ――「強国」「中国式現代化」といった言葉からは、中国の自信が見て取れました。

 前回党大会は2017年です。前年にはブレグジットの動きやトランプ氏の当選といった西側世界でまさかと思うようなことが起こったのを見て、中国は「西側先進国の衰退が見えた」と感じていました。

 昨年の5カ年計画は、反米感情が高まる中、新型コロナウイルスの感染拡大で何十万人も死なせた米国と違って中国は感染を見事に抑え込んだ、「これからは中国の時代だ」という高揚感の中で制定されました。

 二つの文書をコピーしたような今回の政治報告には、5年前と去年の自信や高揚感が引き継がれています。

 けれど、昨年から今までの1年半ほどの間に何があったでしょうか?

 不動産の不況や地方財政の困…

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