「さびついた地」のトランプ旋風はいま アメリカンドリームはどこへ
五大湖の一つ、エリー湖に面した米中西部オハイオ州。過去2回の大統領選でトランプ前大統領を支持したこの地が、11月8日に投開票日が迫る中間選挙でも激戦州となっている。民主・共和両党が訴えかけるのは、米国の繁栄を支えた労働者たちだ。
「ここラストベルト(さびついた工業地帯)は見捨てられ、長年、人々が去っていっている。この地域をどう活性化できるのか」
10月17日、クリーブランドで開かれていた集会を訪ねると、民主党のベテラン下院議員ティム・ライアン氏(49)に、支持者の男性がそんな問いを投げかけていた。
かつて鉄鋼業が栄えたオハイオ州は長く、この一帯をひとくくりにして形容する「さびついた地」という言葉とともにあった。中間選挙で上院議員へのくら替えを目指すライアン氏が強調したのが、中国との競争だ。
「仕事は中国やアジア全域に移ってしまった。我々は仕事を取り戻さなければならない」「我々は中国やインドに打ち勝つ」
地元オハイオへの投資を進め、「偉大な中間層(ミドルクラス)」を取り戻す――。そう訴えた。
ライアン氏はこれまでも選挙戦で、中国への敵意を繰り返し発信してきた。3月末には、こんな動画をSNSに投稿した。
「問題の構図は『我々対中国』(It’s us vs. China)だ。中国は勝ち、労働者が負けている。中国はあらゆるところで、製造業で我々を上回っている。いま、我々が反撃するときだ」
波紋はすぐに広がった。アジア系アメリカ人らの団体は、「民主党はインクルーシブ(包摂的)な党として、嫌悪や恐怖をあおってはならない」と非難する声明を出した。ライアン氏は動画を撤回しなかった。
背景には何があるのか。
かつてこの地域は、労働組合…