特例貸し付けの返済免除となるのは? 日弁連など対象の拡大を要望
来年1月に迫る特例貸し付けの返済開始。ただ、生活が苦しい人は返済が免除される。
緊急小口資金特例貸し付けと、総合支援資金特例貸し付けの初回が、今年の償還免除申請の対象だ。
免除申請できるのは、2021年度または22年度に借りた人と借りた人の世帯主が両方、住民税を払う必要がない(非課税)場合など。
返済免除には申請が必要で、多くの社協は今夏までに案内を送付。例えば東京都社会福祉協議会は、免除申請期間を今年8月末まで、とした。
東京都で貸し付けを受けた人は、都社協の特例貸付事務センターに必要な書類(免除申請書、住民票、非課税証明書)を送るという手続きがとられた。
特例貸し付けについて日本弁護士連合会(日弁連)は10月、「長期にわたる返済自体が生計破綻(はたん)の引き金となる危険が高い」として、返済免除範囲の抜本的拡大を求める会長声明を出した。コロナ禍の困窮者支援を「『貸付』で行うという制度設計自体に問題があった」と指摘し、自己破産など債務整理を必要とする人への支援強化も訴えている。
「借りる人の生活状況がほとんどつかめず」全国社会福祉協議会
特例貸し付けを実施する社協側からも声があがる。全国社会福祉協議会(全社協)は7月、コロナ禍に加えて物価高騰も続く現状をふまえ、返済免除拡大についての要望を当時の後藤茂之・厚生労働相に提出した。返済困難な人への対応に関して、償還を先延ばしするのではなく、生活再建に向けた償還免除要件を拡大するよう求めている。
全社協の生活福祉資金貸付事業支援室の伊藤浩司室長は「迅速な貸し付けが優先されるなか、借りる人の生活状況がほとんどつかめていない。困窮する方々が最大200万円の負債を抱えることで、生活再建がかえって難しくなる恐れがある」と危惧する。(編集委員・清川卓史)
相談・事務急増で人員不足……
・「すでに多くの借受人が転居して、連絡が取れない状態。すでに償還ができそうにないとの相談が増えている」(静岡県社協)
・「今後、膨大な債権管理(免除・償還)が長期にわたり継続する」(熊本県社協)
・「(継続的支援について)社協のマンパワー不足により支援が行き届かないことが想定され、体制整備が課題」(和歌山県社協)
相談支援ができていない……
・「貸し付け事業は本来、相談支援と貸し付けを一体的に行うことで世帯の自立を目的とした制度。しかし、今回は迅速な貸し付けを優先した結果、十分な相談支援は行われていない」(青森県社協)
・「迅速に貸し付けることが優先されたため、相談者に対して十分な相談支援ができておらず、実態が見えない」(山梨県社協)
支援策が乏しい……
・「償還(返済)できないという相談が多く寄せられることが想定されるが、既存の制度やサービスでは具体的な支援策が見当たらない場合がある。国として、コロナ禍で顕在化した生活困窮者の生活再建に向けた新たな施策を検討してほしい」(岡山県社協)
・「恒常的に困窮する世帯への支援策が乏しく、相談に応じても手立てが講じられない苦しさを現場は抱えている」(兵庫県社協)
困窮者が浮き彫りに……
・「今回の特例貸し付けにより、様々な問題を抱え、日常生活が困窮されている方がいかに多く存在しているかが浮き彫りになった」
・「今後、償還を一つのきっかけに、いかに一人でも多くの方と接触をし、話を聴き、相談を受け、支援をし、寄り添いができるかが重要な課題」(いずれも滋賀県社協)
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