横浜に見どころは多いのに9割は日帰り客 カジノなしで描く成長策は

足立優心
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 「生活圏のようなもの。日帰りです」

 東京・世田谷に住む50代男性は、家族と神奈川県三浦市内を観光した後、横浜中華街山下公園に立ち寄った。

 「イベントがあれば泊まるけど」

 自宅まで車で1時間圏内。横浜市内で宿泊することはめったにない。

 横浜市によると、昨年訪れた観光客の数は約2535万人。だが、9割近い2257万人が日帰り客で、宿泊客数は278万人にとどまる。

 平均消費額でみると、日帰りは1人あたり4740円に対して、宿泊客は約2万5千円と大きな差がある。

みなとみらい21、中華街、赤レンガ…あふれる観光資源

 横浜市では、山下ふ頭にカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する計画があった。「観光の起爆剤」として、経済界を中心に期待する声が高かったが、昨夏の市長選で初当選した山中竹春市長が、公約通り、誘致撤回した。あれから1年以上が経つ。

 「観光資源があり過ぎて、点を線に、あるいは面にできていない」と山中市長は話す。

 臨海部を中心にみなとみらい21地区や中華街、横浜赤レンガ倉庫など、観光資源は枚挙にいとまがない。その一方で、観光地が点在し、行き来するのも不便という声も上がる。

 カジノなき後、市は次の一手をどう考えているか。

 市が観光と同時に経済成長の柱としているのが、国際会議や展示会を開くMICE(マイス)だ。

 市は8月に発表した中期計画素案で、「幅広い市内企業に経済波及効果を広げる」とその意義をうたった。

 市内の代表的なMICE施設が、パシフィコ横浜(西区)。アフリカ開発会議(TICAD(ティカッド))やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議にも使用されてきた。

 日本政府観光局(JNTO)によると、コロナ禍前の2019年、パシフィコ横浜では180件の国際会議が開かれ、計約27万人が参加。外国人参加者は計2万人を超えていた。

 しかし、新型コロナが流行した翌20年は6件に激減。運営会社によると、21年度は学会や音楽イベントの再開で会場使用料の収入は戻りつつあるが、オンライン開催などが広がりイベントの規模は縮小、来場者も減少しているという。

 市は中期計画素案の中で、25年度の観光客数の目標を過去最大の3791万人に設定し、国際会議の参加者数もコロナ禍前並みに戻すとした。

 観光客や国際会議の参加者を受け入れる宿泊施設はみなとみらい地区を中心に増えている。

 6月に開業した外資系ホテル「ウェスティンホテル横浜」の担当者は、「日本を代表する国際都市で、国内最大級の複合MICE施設がある。アフターコロナでのインバウンド需要の拡大を大きく見込んでいる」と期待する。

郊外部も大規模開発、懸念の声も

 山中市長は取材に「横浜では宿泊施設が足りず、川崎市横須賀市に泊まることがあったが、ホテルが増えたことで改善されたと思う。これからは誘客の取り組みが必要だ」と話す。

 市は臨海部だけでなく、人口減少や高齢化が進む郊外部で交流人口を増やし、市全体の活性化を図ろうとしている。その代表例が旧上瀬谷通信施設での国際園芸博覧会(花博)の開催とその後の開発だ。

 約242ヘクタールの広大な土地のうち、約100ヘクタールで花博を開催。その後はテーマパークを中心にした集客施設の開発を予定している。花博ではオンラインを含めて1500万人の参加を見込む。その後の集客施設でも1500万人の年間来訪者をめざしている。

 一方で、自然保護の観点から開発そのものに反対する声も少なくない。

 山中市長は「テーマパーク開発で、周辺の公園や交通機関が整備されればまちづくりも進む。定住人口や交流人口を獲得し、経済波及効果も得られる」と話す。(足立優心)