「めんたいロック」の聖地 老舗レコード店、最後の1日に密着した
雲一つない秋晴れとなった10月30日。福岡市の繁華街・天神の雑居ビル2階で、老舗レコード店が45年の歴史に幕を下ろした。
「ジューク・レコード」。1980年代に流行した「めんたいロック」のシーンを支えた、福岡を代表するレコード店だ。
店主の松本康(こう)さんが9月28日、72歳で亡くなった。肝細胞がんだった。松本さん不在では店が成り立たない。惜しまれつつ、閉店が決まった。
この日は、開店前からすでに10人ほどが列をつくった。
午前11時
クリーム色の扉が開き、ジュークの最終日が始まった。
店長代理は、福岡市内でCMディレクターを務める藤田淳一さん(58)。ジュークとの出会いは18歳の頃。めんたいロックにはまり込んだ藤田さんは、雑誌やラジオで店の存在を知った。
「どんなレコードが並んでいるのか」。休日、当時住んでいた佐賀市から高速バスに乗って店に向かった。
パンクロックが好きだった当時の藤田さん。ブルースが聴きたいと松本さんに相談した。
「パンクからいきなりブルースを聴くのは早い。まずは60年代のブリティッシュロックを聴いて、ブルースの雰囲気を知った方がいいよ」
松本さんが勧めたのは、ローリング・ストーンズのファーストアルバムだったという。
藤田さんは高校を卒業し、福岡市内のカメラの専門学校に進んだ。アルバイト先は迷うことなくジュークだった。
あれから30年。2年前に松本さんから連絡があった。「店で働いてくれないか」。松本さんは持病のがんが悪化していた。藤田さんは恩返しと思い、土日に店に立った。
そして、最終日となった日曜…