この夏、新型コロナウイルスの「第7波」は、行動制限がないなか急拡大し、死者は過去最多を記録した。「8月上旬にピークアウト」という政府内の予測は外れ、第6波の教訓も生かされなかった。
「社会経済が回らないから、むしろ緩和していく」。新型コロナの感染者数が爆発的に増え続けていた7月下旬、岸田文雄首相周辺にはこんな声があった。
全国の新規感染者数が過去最多となっていた7月22日の講演で、岸田首相も「社会経済活動の回復に向けた取り組みを段階的に進めていく」と述べ、「現時点で新たな行動制限を考えていない」と語った。結局、第7波の期間中に、まん延防止等重点措置などの行動制限は見送られた。
昨年10月に誕生した岸田政権。直後に迎えた第6波では緩和傾向だった水際対策を転換し、外国人の新規入国を全面禁止。さらに36都道府県にまん延防止等重点措置を適用し、「安全運転」に徹したと評された。
今回、経済重視を打ち出した背景には政権が置かれた厳しい状況があった。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー高や物価高。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題に、安倍晋三元首相国葬をめぐる逆風。経済対策で浮揚したい政権にとり、コロナ対応が足を引っ張る事態は避けたかった。
「危機感ない」から死者急増、搬送困難も
政府内には楽観論もあった…

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