大行列のおにぎり屋「ぼんご」 70歳おかみの愛と2分間のライブ

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土居新平
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経済インサイド

 おにぎり専門店「ぼんご」は、JR大塚駅から歩いてすぐにある。目の前にはゆったりと走る都電荒川線。L字のカウンターに10席ほどの小さな店だ。創業1960年という老舗だ。ここに毎日、長蛇の列ができる。

 店舗を近隣から移転した初日の10月10日は早朝から店の前に客が並び、開店の午前11時半には100人超になった。最後尾は4~5時間待ちだ。

 注文を受け、握り手が目の前でにぎる。新潟産のコシヒカリに入れる具は57種類。「卵黄と肉そぼろ」「シャケと筋子」といった具合に、二つを合わせることもできる。できたては温かくて、大きい。口に入れるとホロッと崩れる。1個300円から。切り盛りするのは、右近由美子さん(70)。元々はこの店に客として通っていたひとりだった。

 新潟市に3姉妹の次女として生まれた。大正生まれの父親は、製紙会社の工員だった。厳格で、ことあるごとに怒られた。靴の脱ぎ方、身なりや言葉遣い、女らしさ――。反発を覚え、家出同然で東京に向かった。19歳。1971年のことだ。

 電車で4時間ほどかけて東京…

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