抑制的な防衛政策の源である憲法9条と、軍事大国の米国に頼る日米安保体制の組み合わせで、日本の外交・安全保障政策は成り立ってきた。中国や北朝鮮の軍拡に対し、日本は米国とのさらなる同盟強化で臨もうとしている中、憲法9条と日米安保体制の関係は今後、どうあるべきか。
「国益を長期的視点から見定め、国際社会で進むべき針路」とされる国家安全保障戦略(NSS)が9年ぶりに改定されるのを機に、添谷芳秀・慶応大学名誉教授(国際政治)に聞いた。
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岸田政権は年内に外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など三つの文書を改定します。今回の改定は日本の安全保障の大転換になるかもしれません。改定に関わる関係者、有識者に様々な視点から聞きました。
――今年末に改定されるNSSについて話をうかがう前に、持論の「ミドルパワー外交」について教えてください。
「敗戦直後に長く首相を務めた吉田茂は憲法9条の下で、国防を米国に頼る日米安保体制を固めて国際社会に復帰しました。戦後日本を支えた『吉田路線』であり、外交政策の仕組みとしては『9条―安保路線』と呼べます。しかし、日本が経済大国となり、米国とソ連が対立する冷戦は約30年前に終わりました」
「近年は中国や北朝鮮の軍拡で緊張が高まり、様々な意味で吉田路線を見直す必要があります。そのためには、日本は米国の同盟国である韓国や豪州をはじめとする地域諸国、さらに最近では欧州諸国などと連携するミドルパワー外交という戦略的視点を持つことが緊要だというのが私の考えです」
――そうしたお考えからして、まず9年前に第2次安倍政権でできた日本初のNSSをどう評価しますか。
「日本の安全保障を確保するために、自助努力、日米安保、国際協力、それに価値観を共有する国々との連携という4本柱を掲げています。前者の3本柱で整理されてきたものに4本目が加わったのは第1次安倍政権以降で、民主党政権にも継がれ、NSSも踏襲しました。私のミドルパワー外交の視角からすると、4本目の柱が年を経て強調されるようになったことは、わが意を得たりです」
「ただ、NSSは『積極的平…
- 【解説】
書きました。NSSというのは、政府が9年ぶりに改定しようとしている国家安全保障戦略のことです。 添谷先生の持論は突き詰めると、アジア太平洋の安全保障に日本が貢献するには集団的自衛権の行使が制限なく認められるべきであり、そのために憲法9条

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