第7回「聞こえないのにできる」に苦悩 IQ140のろう者は才能を隠した

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伊藤和行
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 聞こえないのに、すごいね。よくがんばってる。

 子どもの頃、周りからそう褒められるたび、苦しくなった。

 成績が良いのは、自分にとって普通のこと。

 でも、障害があるだけで「がんばっている」と見なされるのがつらかった。聞こえないことと能力は関係ないはずなのに――。

 西日本に住む40代の女性は、生まれつき耳が聞こえない。

 4歳の時、ジャングルジムで遊んでいた。

 友達は笑ったり、はしゃいだり、互いに反応しあいながら動いている。でも、自分はどうしたらいいか分からず、その輪に入れない。

 自分だけ聞こえていないことを自覚した瞬間だ。

 ろう学校に入学したが、「聴者に慣れてほしい」という親の希望で、小2から一般の公立小学校へ。

 補聴器をつけ、聞きとれたわずかな言葉と、相手の口の動きや表情、しぐさ、文脈などから少しずつコミュニケーションがとれるようになった。

通知表はほぼ「◎」

 授業中、先生が話す言葉はほとんど聞きとれない。

 だけど勉強の内容は、教科書を読めばすべて理解できた。

 ドリルやテストはいつも満点。夏休みの宿題は1日で終わらせた。通知表はほとんどが「◎」。「○」がつくのは国語や音楽の、聴力が必要な項目だけだった。

 勉強をがんばったわけではない。ただ、できただけ。それが普通のことだと思っていた。

連載「ギフテッド 才能の光と影」の取材班に9月、1通のメールが届きました。生まれつき耳が聞こえない女性でした。「勉強ができることが怖く、できない自分になりたかった」と語り「才能をそのまま発揮できる社会になってほしい」と訴えていました。何があったのか。女性に会いに行きました。

聞こえる人はバカ?

 むしろ、他の子たちは耳が聞…

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