支え失った精神疾患の母 介護してきた愛娘の首にコードをかけるまで

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大宮慎次朗
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 精神疾患を抱えていた母親(54)は、一つ、また一つと悩みを抱え込んでいった。

 一家の大黒柱だったという夫を亡くした1カ月後。葛藤の末、5年ほど介護してきた統合失調症の長女(当時21)の首に電気コードをかけた。ともに生きる道は、なかったのか。

 長女への殺人罪に問われた被告の裁判員裁判は、10月から横浜地裁で始まった。殺人罪の成立と被告が心神耗弱の状態だったことに争いはなく、争点は量刑だった。

 白髪まじりの被告は上下スウェット姿で出廷し、検察官や弁護人の質問に淡々と答えていった。

娘が高校を中退 「家で守らなきゃ」

 専門学校を卒業後、病院の看護助手などとして働き、28歳で結婚。数年後に長女と長男を産んだ。

 精神的な不調を感じながらも、4人で「ごく普通」の家庭を築いた。

 一つの転機は2016年ごろに精神科に入院したことだった。

 診断は、双極性感情障害による、慢性的な抑うつ状態。もともと地域のバドミントンサークルに参加するなど活発な性格だったが、以来、ほとんど寝床から起き上がれない生活を送るようになった。

 さらにその後、高校生だった長女から「友達ができないから学校がつらい」と打ち明けられた。被告のすすめで高校を中退した。「この子を家の中で守らなきゃいけない」。被告はそう思ったという。

会話できず失禁のたびにおむつ交換

 ただ、自宅で引きこもるよう…

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