ダンゴムシが丸くなる謎 教授は論文でなく絵本での表現を選んだ
ダンゴムシは丸くなる。それを普通は当たり前と考える。だが、研究者の発想は少し違う。発生生物学の研究者、兵庫県立大学・大学院理学研究科の梅園(うめその)良彦教授(54)は、ダンゴムシが丸くなることができない状況を想像した。たとえば、からだを覆う7枚の殻の順番が変わったら? そんな疑問を発表する場は、論文ではなく絵本だった。
絵本「にじいろのダンゴムシ」の主人公は、虹と同じ赤・橙(だいだい)・黄・緑・青・藍・紫色の7枚の殻を持っている。家に帰って自慢の殻を磨いていた主人公のダンゴムシ。熱が入りすぎて、殻に書いてあった数字が消えて順番がわからなくなってしまった。いつもとは違う順番で殻を身につけた主人公の身に危険が迫る。いつものように丸くなって危機を避けようとしたのだが――。
発生生物学は、受精卵というたった一つの細胞から生きものの体がつくり上げられていく過程を研究する。梅園教授が研究しているのは、ちぎれても体が再生するプラナリアという生物。身近に生息していて子どもたちも大好きなダンゴムシは、これまで研究対象にしたことはなかったが、気になる存在だった。
2年前、梅園教授の提案で、研究室の研究員が研究助成に応募した課題名は「形態と機能の密接な関係性を遺伝子レベルで説明する 新規発生学動物モデルとしてのオカダンゴムシ」。研究費は獲得できずに終わったが、この課題が絵本の原案になっている。
7枚の殻と虹の7色
論文をあきらめ、かわりに絵…