金融機関の制服はなぜ女性だけ? 「廃止」や「復活」を繰り返すわけ

有料記事

西田有里
[PR]

 近所の金融機関に足を運び、驚いた。

 窓口にいる女性職員たちは、そろいの制服を着ているイメージがあったが、自前のスーツ姿に変わっていたからだ。

 全国の金融機関や専門家に話を聴くと、こうした金融機関は増えているという。

 なぜだろう。

 そもそも、女性だけが制服を着ていたのも不思議だ。取材を進めると、制服をめぐる様々な動きと、業界特有の事情が見えてきた。

 埼玉県信用金庫(熊谷市)の北浦和支店(さいたま市)に行くと、窓口には私服姿の女性たちがいた。白いブラウスに黒ジャケット、パンツ姿の正職員の片山加奈子さん(36)に尋ねると、「好きなスタイルを選べる」という。

 これまでは、淡い青色やピンク色などのブラウスにベスト、キュロットかスカートという制服を、管理職と営業職以外の女性は着る決まりだった。だが今年5月からは正職員、来年5月からはパートタイムや派遣などの職員も、「スーツなどの職務にふさわしい服装」で働くことになった。

 人事部担当者によると、女性だけが制服を着るルールは半世紀以上続いていたようだ。「制服貸与規程」(1969年制定)では「品位と美感を保ち、もって職務遂行の向上を図る」ためと説明されている。

「社会の動きにあわない」内部から異論

 しかし昨年、人事部で、2022年春に制服を交換する対象者が例年の約4倍だと判明したことを機に、「社会の動きにあわない」と議論が始まった。

 約1400人が加盟する従業員組合を通じて職員に尋ねたところ「ジェンダーフリーに向かう社会で、女性だけが制服を着ていることに違和感がある」という意見や、「制服姿の女性は男性に比べて補助的な立場だと社内外から見られているように感じる」「キャリアアップに向けた意欲が上がらないデザイン」などの声があがった。「店舗の統一感が保てる」という反対意見もあったが、大半は廃止に賛成だったという。

 人事部担当者は「制服には、店の統一感を高めたりお金を扱う上で大切な公私の切り替えができたりする利点がある」としつつ、「制服姿の女性への『補助的なイメージ』をなくすことを重視した」と話す。

 「私服でも男性職員は朝礼や自分なりの方法で公私を切り替え、責任感を持ってお金を扱っている。一人ひとりが『何を着ればお客様に好印象を与えられるか』を考えて働くほうが、制服で見た目の統一感を出すより結果的に信頼を得られる」

 昨年4月には、同県川口市の青木信用金庫が女性の制服を廃止した。「女性だけが制服、という時代ではない」と担当者は話す。今年4月には京都市の京都中央信用金庫も廃止した。ジェンダー格差をなくす狙いに加え「着替えのために早く出社するのが嫌」という女性の声に応えたという。

起源は高度成長期

 そもそも、金融機関の窓口で女性が制服を着るようになったのはなぜか。

 埼玉大ダイバーシティ推進センターの幅崎麻紀子准教授(ジェンダー学)に聞くと、「金融機関特有の歴史と関係がある」という。

金融機関の制服の歴史をひもときながら、制服にどんな狙いがあり、廃止されたり復活したりしたのかを探ります。

 幅崎准教授によると、日本が…

この記事は有料記事です。残り1702文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません。

Think Gender

Think Gender

男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]