睡眠2時間、ギリギリの日々…救ってくれた保育士のため、母は動いた

有料記事

浦島千佳 伊藤舞虹
[PR]

 「私たちは保育園に救われた」

 そう話す保護者たちが、保育士1人あたりがみる子どもの数を定めた国の「配置基準」を見直すように求め、声をあげている。

 名古屋市の団体職員、川口遥野さん(37)は、子育てと仕事の両立でギリギリの毎日だったとき、保育士たちに助けられた経験がある。

 2015年に長男を出産。生後7カ月で保育園に預け、復職した。配属先は新しい部署だった。

 「このころ長男は、本当に夜寝ない子でした」

 授乳後、抱っこで寝かしつけても、ベッドに下ろすと泣き始める。夜通し抱っこし、細切れの睡眠時間の合計が2時間という日もめずらしくなかった。

 職場では寝不足で頭が回らず、書類に記入する数字を間違えたり、仕事の予定を忘れかけたり。「こんなに仕事できなかったっけ……」と怖かった。

 仕事を終えて、保育園に長男を迎えに行っても、チャイルドシートを嫌がって車に乗ろうとしない。ギャンギャン泣く長男を前に、涙があふれることもあった。30分かけて家に着くと、離乳食を食べさせ、お風呂に入れて。そしてまた、眠れない夜がやってくる。

 子どもはかわいい。がんばりたい。いいお母さんでいたい。やさしくありたい。

 そんな思いが川口さんの頭を占め、だんだんと無理が重なっていった。

 復帰から半年ほど経ったある日。仕事でささいなミスをした。重い気持ちで保育園に迎えに行くと、今度は園に提出する書類の提出期限が過ぎていた。

 「私はこんなことも、できないのか」

 張り詰めていた糸がプツンと切れた。

 子どもの睡眠時間や食事の内容、家での様子を毎日記入して提出する「保育園ノート」が、その日から書けなくなった。「家での生活リズムが分からないと、子どもと保育園に迷惑がかかる」。その一心で、長男の健康に関わることはなんとか記入したが、家での様子を書く欄に、言葉を紡ぐ力が出なかった。

 「お母さん、最近、痩せまし…

この記事は有料記事です。残り2052文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    田渕紫織
    (朝日新聞ハグスタ編集長=子どもと社会)
    2022年11月15日16時9分 投稿
    【視点】

    保育園とその先生を取材していると、保護者と保育士で、あまりに見ているものが違って驚くことがあります。 朝、子どもを預かってから、晩に引き渡すまでの間、子どもと先生はどんな環境にいるのか。 これだけ圧倒的に手が足りない、すり減るような条件