姉が亡くなって5年、出会いに涙した昼下がり つながり合った細い糸

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若松真平
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 生まれ育った福島県いわき市で、カフェを経営している「ぴの」さん(45)。

 三姉妹のわがままな末っ子として、両親だけでなく2人の姉にもいっぱい世話をしてもらった。

 四つ上の一番上の姉は「母親よりも母親らしい世話焼き」で、その愛を重く感じた時期もある。

 結婚前に手書きのレシピノートをくれた時は「そこまで心配しなくても……」と苦笑してしまった。

 そんな姉が2017年10月、がんでこの世を去った。

 診断されてから約10カ月間の闘病生活。

 見舞いに行っても、姉は「ごめんね、心配かけて」「みんな仲良くしてね」といった言葉ばかりを口にした。

 ぴのさんは励ますことに躍起になり、幼いころの失敗談を面白おかしく話したり、漫画を差し入れたり。

 亡くなる数カ月前、リクエストを受けて手塚治虫の「ブッダ」全12巻を持って行ったが、何日か経ってこう言われた。

 「おかしいなぁ、内容が全然入ってこないんだよ」

 すでに文字を読む力がなくなっていたのだと思う。

 姉が逝ってからしばらくの間はぼんやりと過ごし、後悔だけが残った。

 「もっと気持ちに寄り添って、何を望んでいるのかを聞くべきだったのに」

1人で来店した女性

 それから5年が経った2022年10月中旬。

 夫婦で営むカフェに、ぴのさんと同い年ぐらいの女性が1人で来店した。

 午後2時過ぎで、お客さんがほとんどいなかったから「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」と声をかけた。

 しばらくして注文をとりに行くと、彼女は思いがけない質問をしてきた。

 「失礼ですが、お姉さんって…

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