切なさも虚無感も未来も、変幻自在に 米津玄師はかぶき続ける
甲南女子大教授・米澤泉
今月も音楽旬評。秋晴れの某日、米津玄師さんのライブに「参戦」してみた。開場の何時間も前から、会場周辺の物販やガチャや撮影スポットに並ぶ人・人・人。多くは10代、20代の若者だが、ちらほらと年配の方も見かける。男女比は半々か。マンモス大学の昼休みを彷彿(ほうふつ)とさせる光景だ。
やがて開場となり、検温に消毒、電子チケットをかざしての本人確認を経てようやく入場。昨今はライブという祝祭空間でさえも、現実からは逃れられない。
ステージに米津さんが現れライブが始まった。「Lemon」「パプリカ」といった国民的ヒット曲から、アニメや映画の主題歌、古典落語を題材にした「死神」まで。恋する女性の切ない気持ちも、若者の不安や焦燥も、巷間(こうかん)に漂う閉塞(へいそく)感や虚無感も、千年後の未来も。米津さんの手にかかれば、音楽にできないものはないみたいだ。
しっとりしたバラードから疾…