「『もう50歳』から『まだ50歳』に。年齢のバイアスを手放しましょう」
人生100年時代に、「ライフシフト」という新しい生き方を実践する河野純子さん(59)は、そう話します。リクルートで女性向けの転職情報誌「とらばーゆ」の編集長などを務めた後、商社に転職。53歳のときに会社員生活から卒業し、語学留学をした河野さんに、年齢をハンデにしない「大人留学」を成功させるための極意を聞きました。
「ライフシフト」に衝撃、社会人生活30年で退職
――53歳のときに当時、勤めていた住友商事を辞めて、語学留学に行かれたそうですね。
私はそれまで、多くの人と同じように60代をキャリアの終点と考えていました。人生を「学生」「社会人」「リタイア」の三つのステージに分けて考えるライフデザインです。
でも当時、ベストセラーになっていた「ライフシフト」について書かれた本を読んで、衝撃を受けたんです。人生は思うよりずっと長いし、環境が変われば自分も変わる。心がざわざわしたら、心の思うままに行動してみて、軌道修正していく。人生を単純に三つのステージに分けるのではなく、心のままにサイクルを何回も回していく「ライフシフト」こそが、長寿時代の新しい生き方だと思いました。
私が会社を辞めると言うと、夫には「もったいないんじゃない」と言われました。当時、社会人生活が30年になったタイミングだったのですが、人生100年時代なら、まだ折り返し地点かなと。そう考えたら、今後の自分の方向性を探る時間を挟んでも、まったく問題ないのではないかと思いました。
2017年6月に退職し、18年4月から慶応大学の大学院に進学して、社会課題の解決を目指す「ソーシャルイノベーション」を学ぶことに決め、入学までの間に語学留学をすることにしました。
とはいえ、留学といえば若い世代か、最近増えているというリタイア後のシニア世代がするもので、私のような「大人留学」はまだ多くないのではないかと思い、「大人の海外留学プロジェクト」と称して、自ら体験しながら、充実した留学のあり方について考えてみることにしました。
――なぜ、語学留学に行こうと思われたのですか?
22年間働いたリクルートを辞め、マーケティングのスキルを買われて08年から住友商事に勤めていたのですが、当時、フランスに本社のある出版社との合弁事業を手がけました。
当然、契約書も資料もすべて英語なわけですが、お恥ずかしいことに、人生で一度も英検もTOEICも受けたことがない人間だったので、かなり苦労しました。英語ができる社員に翻訳してもらったり、翻訳ソフトを使って読んだり。
一番大変だったのは、向こうの責任者が来日したときでした。会食などの懇親の場で、ビジネス以外の面白いことを言いたいんですが、言えない。笑顔でやりすごす無口な日本人でしたね。
これじゃいけないと、なじみ…