人の計り知れなさ、作り手の忖度、傷つくこと 渡辺あや×山崎樹一郎

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構成 編集委員・石飛徳樹
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 岡山県真庭市でトマト農家を続ける兼業映画監督の山崎樹一郎。公開中の「やまぶき」は今年のカンヌ国際映画祭で評価を得た。島根県浜田市から映画やドラマの脚本を送り出す渡辺あや。フジ系で放送中の連続ドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(関西テレビ制作)はテレビ局の現状をえぐる今期随一の問題作だ。真庭を訪れた渡辺が山崎と語り合った。

 ――渡辺さん、まず「やまぶき」を見てのご感想から聞かせて下さい。

 渡辺 見たことがあるようで見たことがない映画だ、と思いました。特に印象に残ったのがヒロインの父親(川瀬陽太)の人物造形です。

 ――この父親は保守的な刑事であり、娘の山吹(祷キララ)が反戦運動に参加することに反対します。しかし一方で彼の妻はリベラルな戦場ジャーナリストでした。

 渡辺 あの年齢の男性の多面性を、映画で見るのは初めてじゃないかと感じました。でも、父親の人物像が統一性に欠けるという批判も多かったんだそうですね。

 山崎 ええ。彼が戦場ジャーナリストと結婚するのはありえない、そういう設定にするならば何らかの説明が必要だ、と。

 渡辺 私もこういう仕事をしているので、批判があっただろうことは想像が付きます。現実の人間は誰もがあのぐらいの複雑さを持っているはずです。それを理解してくれる成熟した観客を増やしていくことが課題なのだなと思いました。

イデオロギーの一致だけでは

 山崎 イデオロギーが全然違…

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