男子校に広がるジェンダー教育 灘校生「ここまで大変とは…」

机美鈴
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 伝統的な男子校で、ジェンダーに目を向けた教育が始まっている。均質性の高い集団で育つ生徒たちに、多様な視点を学んでほしいと考える教師たちの取り組みだ。19日はジェンダー平等と男性の心身の健康を願う国際男性デー。

 灘中学・高校(神戸市東灘区)で10月にあった土曜講座。公民科の片田(かただ)孫(そん)朝日(あさひ)教諭(46)は「ジェンダーを学ぶ」の題で開講した。女性の性暴力被害や低賃金の問題を学ぶとともに、「アサーション」という自他を尊重した自己表現のレッスンに取り組んだ。

 「恋人や親友に旅行をまたドタキャンされた。気持ちをどう伝えるか」

 約20人に問いかけると、「なんでなん」「またか」との声が上がった。「攻撃的にならず、自分を主語にして伝えられたらいいな」と片田教諭。「楽しみにしていたから残念」「何度も断られると本当は嫌なんかなって不安になるよ」といった例を挙げた。

 同校はトップクラスの難関校として知られる。片田教諭いわく「感情表現よりも微分・積分が得意な生徒たち」。自分の感情に丁寧に向き合わないことは他者の感情をないがしろにすることにつながりかねない。その上、人に助けを求めたり、頼ったりすることが苦手になりがちで、そんな「日本人男性あるある」は生きづらさにもつながるジェンダーの問題だ、と片田教諭は考える。

 参加した高校2年の生徒は「感情表現はわがままではなく相互理解のために必要とわかった」と語った。

 同校公民科の池田拓也教諭(46)は9月、高校3年生約40人が対象の「社会講義」で女性の生理を取り上げた。性教育を専門とする講師と甲南女子大の学生を招き、生理用品を手元に置きながら生理時の体調や負担を語ってもらった。

 生徒からは「ここまで大変とは」「こうした機会がなければ理解はおろか知識も持ち得ない」といった声があがった。

 洛星中学・高校(京都市北区)では、田中めぐみ講師(37)が中3の公民の授業で少子高齢化を扱った際、ワンオペ育児など、背後にあるジェンダーの課題を度々取り上げた。

 生徒の一人は「女は楽でいいな」と思っていたが、女性の性被害や性差別の現実を知った。「男はこうあるべきだ」との自分の思い込みも自覚し、「世界の見え方が変わった」と語る。(机美鈴)

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    能條桃子
    (NOYOUTHNOJAPAN代表)
    2022年11月20日22時14分 投稿
    【視点】

    男子校への授業が重要であると思うと同時に、名門と呼ばれる難関大学への進学が多い高校が男子校に集中していることから構造として社会の資源が男子に傾いていることをどう考えるか、男子校の存在の是非について議論が必要だと思います。