女性目線で、女性を歌う新鮮さ 50年前のユーミンが描いた夢と現実

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 今年、デビュー50周年を迎えた松任谷由実さん。結婚前に荒井由実として活動を始めた当初の1970年代は、どのようにユーミンの歌が受け止められていたのでしょうか。

 Spotifyと朝日新聞ポッドキャストは、数々の名曲を生み出したユーミンの足跡をたどり、日本社会の変化を振り返る「ユーミン: ArtistCHRONICLE」を制作しました。3回目は朝日新聞ポッドキャスト・チーフMC神田大介(47)、編集委員の小泉信一(61)、東京本社社会部記者の江戸川夏樹(41)が出演。一部を編集してお届けします。

神田:1972年がユーミン、当時の荒井由実さんがデビューした年ですね。小泉さんが最初に聴いたユーミンの曲は何ですか?

小泉:何かはわからないんだけど、当時はラジカセで聴くわけですよね。で、深夜のラジオ放送で流れてくる。「少女マンガに出てくるような声だな」という感じがした。

 あと漫画「あしたのジョー」の連載が1973年に終わって、「おれの少年時代が終わっちゃったなあ」という喪失感がありました。その喪失感を埋めるようにして、フォークが流れるわけですよ。

神田:どんな曲がはやっていたんですか?

小泉:かぐや姫の「神田川」が好きだった。家の近くに銭湯があるもんだから、かたかたセッケンを鳴らしていくような感じで。

神田:赤い手ぬぐいをマフラーにしてね。

小泉:ですからユーミンの曲を聴くと、「ちょっと甘ったるいな」と思っていました。あと、当時は高度成長も終わって、全共闘世代。僕の高校では、学園闘争がありました。

神田:大学は有名ですけど、高校でもあったんですよね。

小泉:僕の学校は、機動隊が2回も入り、制服も廃止して、すごいラジカルな学校だった。そういう時代のフォークソングは、共感するものがあった。だから当時、ユーミンを聴くと、なんか本当に甘い感じがした。

江戸川:私は1980年生まれで、子どもの頃は「おどるポンポコリン」がはやって、ユーミンがすごく正統派という時代に過ごしている。世代が違うと、こうなるんですね。

小泉:それに対して僕は、情念を漂わせる藤圭子さんとか八代亜紀さんが好き。大衆文化担当で、編集委員になってからも、夜の酒場が似合う歌手をずっと追いかけていた。

ユーミンのデビュー年に、最も売れた曲は

神田:ここでクイズを出してみようと思うんですけれども、当時のオリコンの調べで、1972年に一番売れた歌、わかります?

小泉:小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」は?

神田:ああ、いいですね。でも、それは2位。正解は「女のみち」。宮史郎とぴんからトリオですね。

 この時代の音楽は、グループサウンズが60年代にすごくはやった影響が残っている時代ではあるんですが、一方で、ムード歌謡があり、ここから演歌にまた流れていく。

 というなかで、この「女のみち」が420万枚という爆発的な大ヒットをしました。

小泉:あの頃は、町に音楽が流れるわけですよね。小料理屋の中とか、電器屋の前とか。確かに、その歌は流れていましたね。

神田:歌詞がね、「わたしがささげた その人に あなただけよと すがって泣いた うぶな私が いけないの 二度としないわ 恋なんか これが 女のみちならば」。こう来るわけですよ。捨てられた女性が、捨てた男性にすがって泣く歌じゃないですか。

 小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」も、「あなたの島へ お嫁にゆくの」という歌詞。「女性の幸せが結婚にある」という価値観が濃厚というなか、突然ユーミンって出てくるわけですよね。結構なショックだったんじゃないですか。

小泉:なんか当時、違う人みたいな感じがしちゃいましたよね。最初はね。

神田:ユーミンの曲「ひこうき雲」のリリースも1973年ですよね。いま聴いても普通に聴けるじゃないですか。当時、「ニューミュージック」という言葉もありましたよね。

小泉:べたべたした、じめじめした歌を、「四畳半フォーク」とも表現していました。

関わりはずっとなかったけれど

神田:当時、中学生くらいの小泉さんとユーミンとの関わりは、まだ一切ないんですけれども、その後どうなっていくんですか。

小泉:はっきり言って、関わりはずっとないんだよね。だけど、私いま東京本社の編集委員と兼務で、群馬の前橋総局に勤務しているんですよ。普段、車を運転して、音楽を聴きながら取材に行く。その時持って行ったCDに、ユーミンが入っていたんですよ。そしたら、自分の風景を邪魔しないんだよね。

 上信越自動車道とか、関越自動車道を走っていても、「中央フリーウェイ」と重なる部分があって。右に見える赤城山、左に見える榛名山とかね。その後、スキーにあこがれたなとか、初めてドライブしたなとか、思い出すんですよ。でね、昨年くらいから、毎日のように聴くようになった。

神田:あれ、だいぶ変わりましたね。

小泉:変わりましたよ。実はね、今回も群馬から東京・築地の朝日新聞東京本社まで、自分の車で、ユーミンを聴きながら来た。本当に気持ちいいんだよね。

神田:どういう心持ちの変化なんですかね。

小泉:やっぱり年を取ったなとね。揺れる気持ちとかあるじゃないですか。若い頃ってやっぱり理解していなかったなと、反省もあるわけですよ。そういう思いがあると、ユーミンが今になってすごい新鮮で良いんですよ。

江戸川:「女のみち」の時代は、男性目線で女性を描いている時代だったんじゃないかと思います。ユーミンの曲は、女性目線で女性を描いたところが、新鮮だったのかなと。「中央フリーウェイ」は、隣に男の人がいて、デートを楽しむ女性みたいな雰囲気が本当に感じられて。この時のユーミン、すごく幸せだったんだなって思った曲の一つです。

神田:ユーミンは東京・八王子…

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