万葉集や谷川俊太郎、壁に短歌 愛知の朝鮮学校で記者が見た「いま」

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編集委員・伊藤智章 高絢実
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 名古屋市内にあった名古屋朝鮮初級学校(小学校)が今春、愛知県豊明市の愛知朝鮮中高級学校(中学高校)の敷地に移転した。同じ敷地で中高級も新校舎を建設中だ。日本と北朝鮮の初の首脳会談から20年。北朝鮮の相次ぐミサイル発射などで、両国の緊張関係は続くが、移転を機に地域と新たな関係を築こうとする学校を訪ねた。

 学校は住宅街を抜けた丘の2・6ヘクタールの敷地内にある。新校舎はいずれも2階建て。目をひくのは従来の5階建て中高級校舎だ。一部吹き抜けで天窓から光が差し込み、上階が外へせり出す凝った造りだ。完成は1973年。在日朝鮮人のカンパで、9億円をかけた。当時は、戦前に日本に来た1世が健在で熱があり、ローンを組んでのカンパも珍しくなかったという。だが、老朽化で今ではひさしのコンクリートははがれて落下し、耐震性も足りない。トイレは一部使用禁止だ。

 経営する愛知朝鮮学園は学校教育法上、「各種学校」扱い。助成はわずかで改修を先延ばししてきた。名古屋駅西口の旧初級敷地を17億円で売却し、ようやく懸案に取りかかった。

 少子化や、高校授業料無償化の対象外となったことなどから、60年代に全県で3千人いた同学園の児童・生徒は、約390人にまで減っている。収入を授業料やカンパに頼る学園経営にとって厳しい状況が続く。

 移転も苦渋の選択だった。遠距離通学となり、初級児童は約10人減った。愛知県一宮市の金鮮伊さん(34)の、付属の幼稚園児も含めた子ども3人は、電車と徒歩で1時間半かけて通学する。近くに日本の小学校があり、「迷った」といい、多くの家庭の負担は小さくない。

 朝鮮学校は戦後、在日朝鮮人が帰国に向けて始めた国語講習所が前身だ。授業は朝鮮語で、半島の歴史や地理を詳しく教える。サッカーや民族舞踊にも熱心だ。いまは日本での定住が前提となり、高校1年の「日本語」教科書には万葉集谷川俊太郎の作品も登場する。講堂の壁に「ライン見て 告白すると 頑張るが 見事な結果 振られちゃった」と生徒の短歌もあった。

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