ガソリンスタンド廃業で故郷が消える 地図に名前を…「若者」の挑戦

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柏樹利弘
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 岐阜県飛驒市の山あいを縫うように流れる宮川のほとりに、1軒の小さなガソリンスタンド(GS)がある。約600人が暮らす宮川町にある唯一のGS「山腰石油」だ。古びたスタンドの前の通りを走る車はまばらだが、軽トラックや乗用車が次々に立ち寄る。

 山腰石油はつい最近まで廃業の瀬戸際にあった。

 昨春、「山腰石油がやめるらしい」との情報が地域に駆けめぐった。妻とともに56年間切り盛りしてきた井畑浩一(ひろいち)さん(82)は体力の限界を感じていた。「スタンドがなくなるとみんな困るのは分かっていた」と井畑さん。経営を引き継いでもらえないか、仕入れ元などに何年も声をかけてきたが、採算面からきまって難色を示された。

 閉店すれば、この地域の住民の最寄りのGSは、県境を越えた10キロほど先の富山県内となる。バスの本数は少ない。地域の人にとって車は生活必需品で、「下駄(げた)がわり」ともいえる存在だ。雪深い冬を越すには灯油や軽油も必須になる。

 地域を支えるGSが消えれば、この地域そのものがやがて消えかねない。事態を案じ、立ち上がった人がいた。飛驒市職員として25年間勤めていた山下譲太さん(43)だ。

人口減少が進む中山間地で、地域の「足もと」を支えるガソリンスタンド(GS)の減少が続いています。このままでは地域の衰退に拍車がかかる――そんな思いから、GSの事業を受け継ぐべく立ち上がった過疎地の「若者」を追いました。

「20年後もふるさとの名前を地図に」

 山下さんは山腰石油のある宮…

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    福田直之
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=経済)
    2022年11月24日14時30分 投稿
    【視点】

    山下譲太さんが飛驒市職員をやめ、廃業の危機にあった山腰石油を継承したのは大きな決断だったに違いありません。ただ、いずれもふるさとを愛するがゆえに情熱をもって取り組める仕事であり、山下さんの強い志は一貫しているのだと思いました。 ガソリ

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    岩尾真宏
    (朝日新聞名古屋報道センター次長)
    2022年11月24日14時20分 投稿
    【視点】

    人口減少は「静かなる有事」とも評されます。はた目には大きな変化は感じないものの、人口は着実に減少しており、やがて社会生活の維持に困難をきたすほどの大きな影響を及ぼすためです。 2021年に生まれた日本人の子ども(出生数)は81万1604人