目が見えない=かわいそう? 全盲ユーチューバーが伝えたいこと
「全盲女子の『なみへいまる』です。秋のバラを見に行ってきました!」
10月下旬、大阪市内のマンションの一室。点字講師の山田菜深子(なみこ)さん(35)は慣れた手つきでスマートフォンのカメラを自分に向け、撮影を始めた。
数日前に植物園でバラの感触やにおいを楽しんだことを2分間ほど話し、撮影を終えた。動画をパソコンに転送すると、夫の和也(かずや)さん(36)がすぐに編集に取りかかった。
撮影から編集まで夫婦二人三脚で
生まれつき全盲の山田さんと、右目が見えず、左目の視力がわずかに残る和也さん。ユーチューブチャンネル「なみへいまる」を二人三脚で運営している。
2年前に山田さんが文字起こしの仕事をしていたときに友人と始めたチャンネルで、今年4月から、友人に代わって和也さんが関わるようになった。
動画のテーマ決めや撮影は山田さんが担当する。スマホの音声読み上げ機能で画面上の文字を確認しながら、説明文を書いていく。和也さんは動画に字幕やBGMを入れる。パソコンの画面を見やすいよう拡大して、作業を進めている。
これまでに投稿した動画は約300本に上る。点字の豆知識から外出先で出合ったグルメの話まで、視覚障害者として生きる山田さんの日常を幅広く発信している。
「ふつうに生きる様子を伝えることで、目が見える人と見えない人の間にある壁を取り除きたかった」と話す。
「かわいそう」と言われたあの日
ユーチューバーとして活動する上で、ある出来事が心の深くに残っている。数年前、白杖(はくじょう)をついて1人で外出したときのことだ。
中年と思われる女性から声を…