53億の利益を生んで実刑に 生保社員はなぜ才覚を使い間違ったのか
会社の資金をビットコインに投資して巨額のリターンを生み、一部は自分の報酬に――。ソニー生命保険の社員だった男はこう考えて、約168億円を勝手にビットコインに換えた。結果、詐欺罪などで懲役9年の実刑判決を受けた。しかし、実は約53億円もの利益を生み出していた。男の才覚はどうやって培われ、なぜそれが間違った方向に使われたのか。
東京地裁で6月にあった初公判。上下黒のスーツ姿の被告(33)は起訴内容を認めた。
起訴状によると、被告は2021年5月、業務上の正規の資金移動を装い、英領バミューダ諸島にあったソニー生命の子会社の口座から、米銀行の口座に約1億5493万米ドル(約168億円)を不正に送金し、全額を暗号資産「ビットコイン」に交換したとされた。
公判では、金融政策や世界経済の知識を駆使した「投資計画」が明らかにされた。
就活で社員の話に感動
検察側や弁護側の冒頭陳述などによると、被告はハワイで生まれ、3歳の頃に両親とともに日本に帰国した。中学2年の時に両親が離婚したことで母親と再びハワイに移住し、現地の高校に通った。
入学したハワイ大学では、ファイナンスと国際ビジネスを専攻。この頃から株式投資を始めた。
結婚式場でのアルバイト代の一部を使って、米株式2千ドルを購入した。大学卒業後、日本に帰国する頃には2万5千ドルになっていた。
日本での就職活動では、留学…
- 【視点】
文化人類学者として、人のお話を聞き、それを文章にすることを仕事にしてきました。 しかしこの数年、そのようなやり方の限界を感じることがあります。それは、文章の内容が「いい人」と「悪い人」、あるいは「弱者」と「強者」といったわかりやすい二

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