エネオスが和歌山製油所を操業停止へ 来年秋めど、地域経済へ影響は

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 知事選が27日に投開票されます。新しい知事のもとで再出発する和歌山が抱える現状や課題について、県などへの取材をもとにQ&A方式でお伝えします。1回目は、石油元売り最大手ENEOS(エネオス)ホールディングスが、来年10月をめどに操業停止を発表している和歌山製油所(和歌山県有田市海南市)です。地域経済への打撃が心配されます。

 Q 和歌山製油所はどんな施設なの。

 A 1941年に、前身の一つ「東亜燃料工業和歌山工場(東燃)」として始まったんだ。敷地面積は阪神甲子園球場約64個分の248万平方メートル。1日に12万400バレルの原油を処理する能力がある。製造品出荷額ベースで県の約20%、有田市では約90%を占めるよ。

 Q 停止すると地域への影響はどうなるんだろう。

 A 望月良男・有田市長は「大きなショックを受けた。経済及び雇用の面で大きな影響があり、今後の有田市にとって大変重大な問題だ」と市議会で発言した。5月には連合自治会や望月市長らが約2万900人分の存続を願う署名を携えて東京都のエネオス本社を訪問したんだ。

 Q 製油所で働いていた人たちはどうなるの?

 A エネオスは、製油所の従業員約450人は、配置転換などで雇用を継続するとしている。でも、協力会社やその下請けで働く計約900人については、方向性は示されていない。協力各社は、企業努力で新事業の創出などに取り組むとしているんだけど、望月市長は10月の跡地利用を検討する会議で「雇用の面で地元の切迫感が強まっていると感じる」と話しているね。

 Q なぜ操業を停止することになったのかな。

 A エネオスは1月の記者会見で「人口減少、脱炭素化の流れ、車両の電動化など構造的な要因により、石油製品の内需の減少は避けられない」と説明した。石油元売り各社は生産拠点の統廃合を進めているんだ。エネオスは2019年の計画で国内の石油製品需要は40年にいまの半分になるとみている。

 Q 行政はどう対応しているの?

 A エネオスや県、地元市は検討会を定期的に開き、跡地利用について話し合っている。10月の検討会で、エネオスは優先的に検討している新たなエネルギー事業など複数の新規事業案について説明した。けれども、どの程度の雇用が生まれるか詳細は明らかにされていないんだ。製油所が停止する来年10月以降も石油精製装置やタンクなどを取り除く無害化工事が約3年半かかる。県や市はその工事で発生する雇用にも期待している。

 Q 替わる事業はないのかな。

 A 県としても石油や鉄鋼、化学など重厚長大型の産業構造から転換する必要があるのは分かっている。昨年9月末には日本製鉄関西製鉄所和歌山地区(和歌山製鉄所)にある高炉2基のうち1基の操業をやめた。県は、南紀白浜空港があって都市部からの便がいい白浜町にIT企業を呼び込むことや、串本町のロケット発射場を足がかりに関連産業の集積などに取り組んでいる。(伊藤秀樹)

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