ドイツ戦も、スペイン戦も、日本を救う同点ゴールをたたき込んだのは堂安律(24)だった。
サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で絶好調のアタッカー。
ドイツ戦の得点は、相手のGKがはじいたボールを蹴り込んだものだった。スペイン戦では強烈なミドルシュートでGKの手をはじくようにしてネットを揺らした。
「ドイツ戦(の得点は)ただのごっつぁんだろうと言う人もいたが、こうして結果で黙らせた。今日くらいはみんな称賛してほしい」
筋金入りの負けず嫌い、である。
小学生のときには、もうその性格だった。
少年時代のコーチ、早野陽さん(38)が堂安と出会ったのは小学校4年生のとき。セレッソ大阪の下部組織に合格できず、失意の中で入った西宮サッカースクール(兵庫県西宮市)だった。
早野さんは振り返る。
「初めて見たとき、小学校にここまでの子がいるんだと思いました」
群を抜いていたものが二つあった。
一つは、ファーストタッチのうまさ。もう一つは、負けず嫌いな性格だった。
「僕が他の選手を褒めると嫌そうな顔をする。僕が『そいつうまいな』と言うと、律は『うまいか?』と答えるんです」
試合では決まって、早野さんが褒めた選手に対して勝負を仕掛けていった。
早野さんはそんな性格を踏ま…