文化財守り、魅力伝えたい 縁のなかった島根で風土記の丘所長に

大村治郎
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 島根を代表する文化財が集中する島根県立八雲立つ風土記の丘(松江市大庭町)は今年、開所50周年を迎えた。歴史と自然があふれる風景は、今も古代出雲の雰囲気を残しているといわれる。高屋茂男さん(49)は今春から所長を務め、その魅力を伝え続けている。

 奈良時代の「出雲国風土記」(733年)に「神名樋野(かむなびぬ)」と記されている茶臼山を中心に広がる風土記の丘。松江市南郊の東西5キロ、南北4キロにわたるエリアに点在する史跡群を、島根県が野外博物館として総合的に保存・活用しており、1972年に全国6番目の風土記の丘としてオープンした。

 エリアには出雲国府跡や出雲国分寺跡、山代二子塚(やましろふたごづか)古墳、岡田山古墳などがあり、古代出雲の中心地だった。展示学習館では出土品を展示しており、中でも平所(ひらどころ)遺跡で見つかった国重要文化財の「見返りの鹿埴輪(はにわ)」は名高い。

 京都の花園大を卒業後、学芸員を志したが、京都周辺では募集がほとんどなく、2005年、それまで縁のなかった島根に。「出雲は神話ゆかりの地であり、古代史をはじめとする歴史の宝庫。研究者にとって憧れの場所です」

 だが、「初めのころは土地勘もなく、どこにどんな遺跡や古墳があるのかも分かりませんでした。そこから勉強しなければならない上に、07年には展示学習館のリニューアルオープンもあり、その準備で大変でしたが、仲間に支えられました」と振り返る。

 学芸員として印象深い仕事として、様々な鬼の資料を集めた展示や、風土記の丘近辺の寺社の宝物展などを挙げる。子どもを対象とした火起こしや、勾玉(まがたま)、土器づくりなどの体験事業にも力を注いできた。

 「風土記の丘にまた来てみたいと感じるような、子どもたちの印象に残る取り組みを続けていくことが大切です」

 新型コロナウイルスの影響で、風土記の丘を訪れる子どもたちが減っているというが、「風土記の丘の持ち味は、遺跡や古墳が今もあり、そこで出土した遺物を展示していることです。ここに足を運んで、歴史や古代の雰囲気を体感してほしい」と願っている。

 風土記の丘の半世紀の歩みは、「地域の人々の支え抜きに考えられない」とも話す。展示学習館の収蔵品は約3千点あるが、その約3分の1は地域の人々による寄贈・寄託品だという。「先人や地域の人々の思いを受け止めて文化財を守り、その魅力を伝えていきたい」(大村治郎)

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たかや・しげお 1973年、京都府園部町(現南丹市)生まれ。96年、花園大卒。2019年、佛教大大学院博士後期課程修了。専門は戦国期の城郭研究。05年、島根県立八雲立つ風土記の丘学芸員に。17年から学芸課長、今年4月から現職。編著書に「出雲の山城」「石見の山城」。