生産者20人「幻」のスーパーライス もち米紫宝はミネラルたっぷり

茂木克信
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 コシヒカリや新之助を生んだ日本一の米どころの新潟に、ほとんど市場に出回らない「幻の米」がある。それが、紫がかった黒色をしたもち米の「紫宝(しほう)」だ。

 紫宝の玄米の果皮には、ブルーベリーやナスの皮などと同じく、アントシアニン系の色素に由来するポリフェノールが含まれる。玄米自体も、一般的な玄米よりカルシウムマグネシウム食物繊維が豊富だ。

 粒は一般的なコシヒカリと比べてやや細長い。白米1合につき小さじ1杯ほど入れ、水に1時間ほど浸してから炊くと、全体に薄紫色がつく。さらに15分ほど蒸らすと、芳しい香りやモチモチした食感が増す。玄米がゆや赤餅、米菓の原料にも向いている。

 誕生のきっかけは、国の「スーパーライス計画」だった。国民のコメ離れが進む中、農林水産省は1989年、それまでにない形や性質のコメの開発を始めた。冷めても硬くなりにくい低アミロース米や有色素米、香り米などで、県も同年、新潟の気候風土に合う新たなコメの開発に取りかかった。できたのが有色素米の紫宝や、低アミロース米「秋雲」、香りうるち米「かほるこ」など9品種で、県は2000年度から県内の農家に種子の配布を始めた。

 ただ、既存の品種との交雑を防ぐためにきめ細かな生産管理が求められた。栽培方法は確立されておらず収穫量は不安定で、農家の生産意欲をそいだ。何より、コシヒカリという絶対的なブランドがあった。普及開始から5年後の05年に県が調べたところ、作付面積は9品種で計2・1ヘクタール(そのうち紫宝は1・3ヘクタール)にとどまった。

 その後、紫宝の作付面積は健康ブームの後押しもあって増減を繰り返しながら増え、16年にはピークの約2・9ヘクタールとなった。だが今度は、生産者の高齢化などから急速に面積を減らし、21年は約1ヘクタールに。中越地域を中心に約20人が細々と作っていて、これが「幻の米」たるゆえんだ。

 生産者の一人、燕市杉柳の長谷川治さん(73)は10年前から作っている。当時、燕商工会議所が農商工連携プロジェクトを開始。市名のツバメのイメージから紫黒米を使った特産品を作ることになり、県外で開発された紫黒米を生産していた長谷川さんに依頼が来た。有機肥料と減農薬で育てられた長谷川さんの紫宝は、プロジェクトから誕生したフードブランド「HIEN(ヒエン)」の玄米やラスクなどの商品に使われている。

 17年からプロジェクトの事務局を務める株式会社ネルニード(新潟市中央区)の遠藤智弥代表取締役(48)は、「働く女性のライフスタイルを意識した商品を手がけてきたが、コロナ禍後のマーケット戦略をもう一度練り直したい」と語る。来年2月に東京・有明で開かれる食品展示会に新商品を投入したい考えだ。

 プロジェクトメンバーの「飴屋本舗」(燕市宮町)も、紫宝を使ったシュークリームやマドレーヌを販売している。幻ではなく、新潟の食や地域の魅力づくりに一役買っている。(茂木克信)

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 紫宝 2004年に県が品種登録した紫黒米。「新潟糯(もち)31号」(わたぼうし)と、インドネシア・バリ島の紫黒米に由来する「奥羽糯349号」(朝紫)を交配した。「HIEN」ブランドの商品は、玄米が1袋(150グラム)540円(税込み)など。オンラインショップのほか、新潟市中心部ではJR新潟駅構内の「ぽんしゅ館」や新潟伊勢丹新潟日報メディアシップで取り扱っている。

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