巨大ハコモノ次々、浜松・静岡で野球場や文化施設 維持費の議論低調

統一地方選挙2023

床並浩一
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 スポーツ施設や文化観光施設など大型公共施設の建設をめざす動きが浜松、静岡両市で盛んになっている。建設を求める地元の声が大きく、行政も意欲的だ。両市で予定されている来春の市長選を待たずに、県の新野球場や静岡市のサッカー場など一部の注目事業では、年内にも施設の規模を方向づける決着が予想される。(床並浩一)

初期投資・維持費 論議は低調

 「硬式野球を想定すると高さは50~60メートル。県がつくる場合、広域利用を見込み、それなりの収容人数になるが、決まっていない」

 今月1日。遠州灘海浜公園篠原地区(浜松市)で建設をめざす新県営野球場案をめぐり、県は県議会建設委員会で、ドーム案を説明した。野外の草薙球場(静岡市)と同規模(2万2千人収容)の場合、概算事業費は最大370億円になる事業という。

 県は公園の将来像をまとめた6年前の基本構想で、県営球場の導入を明記。その後、照明設備を設置した野外案も提示してきたが、近くの海岸に上陸する絶滅危惧種のアカウミガメの生態に照明のあかりが影響すると判断。ドーム案と照明なし野外案から1案に絞り込む方針だ。委員会では、「アマチュアの利用を想定した高さを考えたらどうか」などと指摘されたが、飯田温都市局長はこれまで想定として掲げてきたスケジュールを踏まえ、「12月までに示したい」と理解を求めた。

 県が意欲を示すのは、2万2千人収容のドーム球場を求める地元の意向によるところも大きい。川勝平太知事に直訴した8月の要望活動では、鈴木修スズキ相談役ら要人が同席。浜松市や市議会、浜松商工会議所、市自治会連合会は「建設促進期成同盟会」を結成するなど、官民を挙げた動きを活発化している。

 一方で、初期投資に必要な多額の財源に加え、県が最大5億円と試算している年間維持費など、施設の安定運営に欠かせないコスト面をめぐる議論は深まっていない。原材料高や労務費の高騰など新たな負担増のリスクに対する検証も十分とはいえない。

 浜松市側に一定の負担を求めるべきだとする意見もあり、県は「検討したい」と説明しているが、案が絞られるまでに市側との調整が決着する見込みは立っていない。

 県がJR東静岡駅(静岡市)の近くで整備する新県立図書館は、約180億円と見込んだ事業費が膨らむ可能性もあるという。

 静岡市の事業でも、JR清水駅近くに「サッカースタジアム」(仮称)を整備する構想や清水港近くに水族館機能を備えた「海洋文化施設」(同)を整備する計画など、来年1月に正式に開館する市歴史博物館に続く大規模施設整備事業が目白押しだ。

 「Jリーグ基準」や利便性向上を目的に浮上したサッカースタジアム構想をめぐっては、新設案と既存のIAIスタジアム日本平の改修案のいずれかが、近く市有識者会議で選択される予定。市民を対象に実施されたアンケートも踏まえた議論が予定されているが、数百億円とみられる事業費や運営経費をめぐる議論は深まっていない。

争点化 動き見られず

 来春の統一地方選では、浜松、静岡両市で市長選が予定されている。だが、こうしたハコモノ事業を争点化する動きは、いまのところみられない。地元経済界など「建設推進派」に支えられた新顔ら、これまで立候補を表明した人の中に、明確に事業の白紙化を主張する人はいない。

 浜松市長選に立候補予定の新顔の記者会見には、新球場建設を主導する経済界と市議会から有力者が同席した。

 静岡市長選をめぐっては、立候補を表明した新顔2人が市内のハコモノ構想の実現に一定の理解を示す。新顔の一人はサッカースタジアム構想について「継承する必要がある」としたうえで、「単体では成り立たない。複合機能を持つ施設が必要だ」と主張する。一方、東静岡駅近くの市有地で浮上している「アリーナ」構想については慎重な姿勢も示す。

運営費含め検討を ■ 利用想定 十分に

 公共事業や自治体財政に詳しい小泉祐一郎静岡産業大教授(公共政策学)に、県内で計画や構想が相次ぐ大型事業について聞いた。

 ハコモノ行政の問題点としては、財政的な観点と政策的な観点の二つが大きなポイントになる。

 まず財政面では、公共投資の経費総額が当該自治体の財政規模からみて過大になるかどうかが問題になるが、現状では、県も静岡市も過大投資にはならないと考えている。静岡市の場合、前市長時代に年間700億円規模だった経費総額が、現市政では400億円レベルに抑えられており、財政上、問題はないと思う。その一方、初期投資額だけでなく、施設が完成後の運営経費、いわゆるランニングコストも含めた全体の経費を見る必要がある。

 政策的には、政策形成過程の問題に加え、政策目的と手段の関係が不明確で無目的な場合、「多目的」となり、当初の利用想定が実情と乖離(かいり)することがある。他県の類似施設の利用実態などを十分に調べ、計画に反映させる必要がある。

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