「解散命令」で宗教法人の問題は解決するのか 島薗進さんが語る論点

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聞き手 編集委員・豊秀一
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耕論 解散命令請求 その前に

 政府は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、解散命令の請求に向けた動きを進めている。解散命令と憲法が定める「信教の自由」をどう考えたらいいのか。何を議論することがいま求められているのか。日本宗教学会元会長で、新宗教の問題にも詳しい島薗進・東京大学名誉教授に話を聞いた。

 ――旧統一教会に対する宗教行政の適切な対応を要望する声明を宗教研究者有志で発表し、記者会見もされました。最も問題提起したかったのはどの点でしょうか。

 「旧統一教会が行ってきた正体を隠した勧誘は、『信教の自由』の侵害にあたります。一般市民や信者の家計を圧迫させ、破産に追い込むほどの献金要請は公共の福祉に反します」

「耕論」では 一つのテーマについて3人の論者がそれぞれの視点から論じます。ほかのお二人の論考は以下のリンクからお読みいただけます。

 「こうした人権侵害に対して、教団としての責任を認めてこなかったことは許容できることではありません。行政的対応の迅速かつ適切な遂行を求めていこうとなったのです。宗教研究者の中には旧統一教会の問題について研究を重ねてきた人々もおり、宗教学者として発言する責任があると考えました」

 ――正体を隠した勧誘が「信教の自由」を侵害するとは、どういう意味でしょうか。

 「本来の意図を隠して巧妙な勧誘や伝道が行われ、いつの間にか、教団の言うままになってしまう。マインドコントロールと呼ぶ人もいます。何を信じ、何を信じないかという個人の主体性を奪ってしまうという点で、信教の自由への侵害となります。そのことを明確にしたのが、2001年6月の札幌地裁判決です。正体を隠して勧誘・伝道し、人の弱みに巧みにつけ込む。宗教教義とは直接の関連のない不安をあおり立て畏怖(いふ)困惑させ、財産の収奪などを行う。これは原告たちの信仰の自由財産権などを侵害するおそれのある行為で、違法だとしたのです」

 「多くの国の憲法と同じように、日本国憲法も信教の自由を侵害してはならないと国家権力に命じています。政府に対して、宗教団体や個人の信仰への介入を禁止しているのです」

これまでの法体系で十分か

 「ところが、国内では197…

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