公共図書館の司書が待遇改善を訴える署名が、反響を呼んでいる。ここ30年ほどで非正規職員が増え、その大半が女性たちだ。
こうした実態について、「自治体が貧困ビジネスをしている」と指摘する専門家がいる。非正規公務員問題に詳しい立教大の上林陽治特任教授だ。
なぜ、このような状況になったのか。話を聞いた。
――図書館の現場は、非正規の女性たちによって支えられています。まず、非正規が増えた理由は何でしょうか。
バブル崩壊後、地方財政は急速に悪化して、自治体は人件費を削ることを迫られました。その結果、正規公務員の数を急激に減らし、その代わりとして非正規公務員を採用してきました。
総務省の調査によると、全国の正規の地方公務員は2021年時点で約280万人。1994年のピーク時の約330万人から15%近く減少しています。
「女性の労働は家計補助」 日本型雇用の歪み
一方、非正規公務員の数は、05年度は約46万人でしたが、20年度には約70万人に増えています。そして、非正規公務員の75%が女性です。
――その中でも、なぜ司書は非正規雇用の女性が多いのでしょうか。
非正規化は、役所の中の部署…
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テレビドラマにもなった尾崎衣良さんの漫画「深夜のダメ恋図鑑」に同棲している彼女が家事を一切しない男性が登場するのですが、その彼へダメ出しをするセリフは、なぜ女性の労働が低賃金になりがちなのかを示しています。 「コイツみたいなのを見てると居
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専門職の冷遇は「日本型雇用」の特徴だが、それと別に気になるのは、非正規公務員問題の研究者が上林氏以外にはほとんど出てこないことだ。 私見では、これは日本における学問の専門化と関わっている。 学問体系としては、公務員の問題は行政学