図書館の司書は「情報のプロ」、でも待遇は… 国に期待する役割とは

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宮田裕介
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 「手取り9万8千円で働く非正規図書館員です。図書館の今を知り、未来のために署名をいただけませんか?」

 ある市立図書館で非正規職員として働く女性司書が、ネット署名を始めた。7万人以上が賛同し、11月上旬、文部科学省総務省に提出された。

 長年、大学で司書の育成に関わってきた都留文科大学の日向(ひなた)良和教授(図書館学)も署名提出に駆けつけた一人。現場の状況に、危機感を抱いているという。その思いとは。

 ――大学で司書課程を教えているそうですが、待遇面についてはどう伝えているのですか。

 漫画やドラマで描かれる司書の姿はキラキラしています。例えば、埜納(ののう)タオさんの漫画「夜明けの図書館」。学生は憧れや夢を持って、司書になろうとしてくれます。

 けれども現実は、全国どこの自治体でも、「手取り9万8千円」のような待遇が珍しくありません。一人暮らしで働こうと思っても、アパートを借りて、生活費を払ったら、ほとんど手元に残らない状態の人たちがほとんどです。

 学生たちには、「ほとんどの人が非正規で、1人では暮らしていけません」とはっきり伝えなきゃいけない。私自身も悲しい気持ちになります。

 ――なぜ、こんな状態になっているのでしょうか。

 公共図書館の数は増え続けて、1991年は1984館でしたが、今や3316館です。

 ところが、正規の公務員の司書は減っており、足りない人手は、非正規の人が担っています。構造的な問題なんです。

 いま、図書館は約8割が女性という職場です。自治体は、近所に住んでいて、両親と同居していたり、夫が主な稼ぎ手だったりする女性を集めてきました。こうした施策が、女性を扶養範囲の中に押し込めたり、官製ワーキングプアを生み出したりといったことにつながってきたと感じます。

 自治体が正規化を進めるとともに、非正規の待遇も改善し、継続的に雇用してほしいと思います。

正職員「ほとんどない狭き門」

 ――正規の公務員の司書になる道は、どれくらい厳しいのですか。

 図書館界では、毎年約1万人…

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