塩野義製薬が開発する新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」が緊急承認される方向になった。ただ、海外の製薬企業は、すでに先行して抗ウイルス効果のある飲み薬の開発に成功し、医療現場で使われている。「出遅れ」の背景には何があるのか。
米ファイザー社や米メルク社など海外の製薬企業に比べ、塩野義のゾコーバをはじめとする国産の治療薬の開発が遅れた理由には、有効性や安全性を調べる治験の難しさがあったとみられる。
通常、医薬品の開発には、数千から数万の参加者の治験が必要とされる。しかし、新型コロナが世界中で広がった2020年、日本の感染者は多い時期でも1日に数千人規模。数十万人という規模で感染者が出ていた欧米に比べると感染者の規模は小さく、国内企業は治験の参加者集めに苦労した。
日本でも感染者が急増した22年は、これまでよりも重症化しにくいオミクロン株が主流になった。薬を使わずに自然に回復する人も多く、薬の効果を調べにくくなった。塩野義の手代木功社長も5月の決算説明会で「これだけウイルスの変異が繰り返される中、治験でどんな症状を重要視すればいいのか。模索しながら、苦しみながらやっているというのが正直なところだ」と話した。
欧米の大手製薬企業ではコロ…

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