過疎の町に手作りのスケボーパーク 廃校の運動場に戻った子どもの姿
三重県南伊勢町の廃校にスケートボードが楽しめる「穂原スケートパーク」がお目見えした。スケボー人気の高まりを受け、過疎地の子どもたちにも専用施設を提供しようと愛好家らの尽力でできた。オープンから1カ月。町内外から大勢の人が詰めかけている。
穂原スケートパークは、旧穂原小学校(同町伊勢路)のグラウンドに10月、オープンした。広さは縦20メートル、横47メートル。セクションと呼ばれる障害物が8基並ぶ。高さ1・5メートルの斜面のバンクが3基、U字形のミニランプもある。
町内では、これまで南伊勢スケートボード連盟に所属する大人たちが、車がほとんど通らない町道で希望する小中学生に教えていた。年間2、3人だったが昨年開催された東京五輪を機に増加。10人を超え、アスファルトの駐車場を借りて教室を開いていた。
そんな事情もあって連盟と、健康教室などの運営をしている民間団体「みなみいせ元気ネット」が、2年ほど前から専用施設を造るため動き出した。元気ネットのクラブマネジャー玉山寿美さん(47)らが町に打診したところ、廃校になっている旧穂原小のグラウンドを無償で借りられることになった。町と生命保険会社系財団からの助成金計660万円を得て今年、建設に踏み切った。
構想段階から有志が寄付金や資材を提供した。セクションを自前で造って持ち込んでくれたほか、釣り堀業者がいかだに載せていた屋根を休憩所として提供した。ミニランプは松阪市の建築業稲継雅和さん(49)が7日かけて無償で造った。「子どもたちのためになるという熱い話に関われたことがうれしい」
連盟代表で養殖業舌古(ぜっこ)勇樹さん(42)もバンクを仲間とともに造った。スケボー歴は28年。「道以外に練習場所がなかった昔と比べると感慨深い。廃校を有効利用できたうえ、ほかのパークと比べても負けない施設になったと思っている」
パークの利用は無料で、午前7時から午後7時。管理人はおらず、「自己責任」が原則だがトラブルは今のところ起きていないという。
平日は学校帰りの小中高生20~30人が練習のため利用している。週に5日も通う小学生もいる。教室の生徒は40人に増えた。土日になると町外からも含め、80人ほどに膨れあがるという。利用した人が滑る様子を動画で撮影し、SNSに投稿することでPRにつながっているようだ。
玉山さんは「いい形で交流の輪が広がりつつある場所になっている。新しい生涯スポーツだと考えており、町づくりにもいかせたら」と期待している。
27日に完成を祝う初めてのお披露目イベントを開く。ジュースの鏡割りをするほか出店も並ぶ。詳しくは穂原スケートパークのインスタグラムか、みなみいせ元気ネットの電話(0599・66・2009、水・日曜除く午前のみ)へ。(臼井昭仁)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。