出向したJAL・ANAの客室乗務員はいま 空に戻らない人も

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松本真弥
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 久しぶりに「鶴丸」のロゴが入った制服に袖を通した。成田空港の出発ロビーのモニターには、運航便の情報がずらりと並んだ。

 「戻ってきたんだな」

 今年7月、三好真央さん(29)は日本航空(JAL)の国際線の客室乗務員(CA)として、約1年ぶりの乗務に向かった。米ボストン行きの機内は、東南アジアからの乗り継ぎ客でにぎわっていた。

新型コロナで航空需要が落ち込み、多くの客室乗務員が出向にでた。そしていま、水際対策が緩和され、もとの仕事に復帰し始めている。中には新しい道を選んだ人もいる。コロナ禍を経て業界の人材戦略も変化している。出向した2人のいまを追った。

「人の役に立ちたい」思い

 2020年、新型コロナの感染が広がり、便数はみるみる減った。月10便ほどの国際線の乗務をこなしていた三好さんのスケジュール帳から、フライトの日程はほとんど消えた。

 自宅でのリモート研修が入るようになり、空いた時間は英語やワインの勉強など自分磨きに充てた。感染はすぐに収束すると思っていたが、そうはいかなかった。終わりが見えない日々に、転職が頭をよぎった。

 JALはこの年の夏ごろから出向者を送り出していた。社外に出てコールセンターや不動産会社などで働く同僚の姿は、連日のように新聞やテレビで取り上げられた。

 21年7月から、出向することが決まった。「人や社会の役に立ちたいという思いが募った。同僚の姿にも背中を押された」

 受け入れ先は日本ユニセフ協会。米ニューヨークの本部から届く英語の広報文を翻訳したり、インスタグラムツイッターなどのSNSを更新したり。活動などを伝える「ラジオ・ユニセフ」のDJも務めた。

 CAらの「タンス外貨」を募金する企画も実現させた。頻繁に海外と行き来する同僚たちは、両替せずに外貨を眠らせていることを知っていた。

 約2カ月間、羽田空港などに募金箱を置くと、硬貨だけで約27万円相当が集まった。「入社してからアイデアを出して、それを実現させるのは初めて。充実した日々だった」

 乗務に戻った今、広報で培った経験が生きているという手応えがある。機内で紙ストローを提供する際、JALの脱炭素の取り組みを乗客に伝えている。こうした姿勢が次の搭乗につながるかもしれないと考えるからだ。

新しい仕事はメタバース

 出向を機に別の道に進んだ人もいる。

 吉田満里菜さん(30)はい…

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    座安あきの
    (ジャーナリスト・コンサルタント)
    2022年12月7日7時54分 投稿
    【視点】

    異業種に出向したCAの方々のその後と、エアラインの人材戦略の見直しは、企業にとっても働き手にとっても関心の高いトピックだと思います。出向を経験したどの方も、「職業」としての選択ではなく、自分自身の「生き方」の選択を考え、「知らなかった自分に