「役員いりません」 マンション管理新方式・理事会なしの魅力と魔力

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アナザーノート 中川透編集委員

 分譲マンションを買った人の悩みの一つが、管理組合の役員に就任するかもしれないこと。高齢になったり、子育てや共働きで忙しかったりと、様々な理由で引き受けられない人がいて、なり手不足が課題だ。そんななか、役員選びは不要とうたう新たな管理サービスが出始めている。なぜそんな「負担」軽減をできるのか。カラクリを探った。

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 まず取材で訪ねたのは、「タラタタッタタ♪マンションのことなら」のCMで知られる長谷工グループ。入居者の不安や負担を減らして気軽に住めるようにと、新サービス「smooth-e(スムージー)」を展開している。昨年8月から試験的に始め、今年4月から管理組合への提案を本格化。今は首都圏や関西の新築~築10年ほどの15物件に提供している。

 「サービスの出発点は、役員になる負担感やなり手不足など入居者の困りごとの解決です。新築マンションを手にした喜びもつかの間、役員に選任されて、不安に思う顧客の姿を見てきました」。運営する長谷工コミュニティの恒吉正俊担当部長はそう話す。

 分譲マンションを買うと、住人(区分所有者)は管理組合のメンバーになる。運営の要となるのが約1~2カ月ごとに開く理事会。複数の役員(理事)が抽選や輪番で選ばれ、その代表が理事長(マンションの管理者)になる。会社にたとえると、理事長は社長、理事会は取締役会の位置づけだ。

 スムージーを始めると、理事会をなくすので役員がいらず、理事長代わりの管理者に長谷工コミュニティが就く。同社は管理組合から管理を受託したこれまでの役割と、委託する側のマンションの代表者としての新たな役割と、1社で2役を担う。

 このふしぎな関係は不都合が生じやすい。例えば、マンションを代表する立場では管理の費用を抑えた方が住人に喜ばれるが、管理会社としては収益をしっかり保ちたい。利害関係が対立する「利益相反」になる。

 対策として新たなチェックのしくみを築く。お金の不正がないかを外部の監査法人が点検したり、住人や外部の専門家を「監事」に選んだり。監事は会社でいうと監査役のような役目。適切な運営を確かめる立場だ。

 住人への情報公開も進め、運営の透明化を図る。スマホの専用アプリを使い、日常的な管理や設備の状況を定期報告。自社に工事を出す際はオンライン投票などで賛否を問う。アプリ上には投稿機能を設け、住人が意見を伝えやすくした。「駐輪場に自動空気入れがほしい」などと声があがれば、ほかの人もアプリ上で考えを表明できる。関心の高い提案は住人全員で投票し、賛成が多いと実行へ。すべて会社側におまかせでなく、管理への関心を持ち続けてもらうしかけだ。

 これまでの管理サービスのグレードアップ版との位置づけで、追加費用は1戸あたり月300~1千円ほど。チェック役を監査法人に頼むとさらに年10万~20万円ほどかかる。導入にはマンションの規約改正が必要で、管理組合の総会で4分の3以上の賛成がいる。費用や手続き面のハードルはあるが、管理物件から問い合わせが多くあるという。

なぜ今広がる? 第三者管理方式

 住人が理事長にならない方式は第三者管理方式と呼ばれ、実はこれまでも一部であった。大半は投資用ワンルームやリゾート地のマンション。自ら住む所有者が少ない、遠方で暮らす人ばかりで理事会が成り立ちにくいなどの理由で、管理会社が引きうけていた。

 マンションは住人の大切な資…

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