「練習が楽しみ」の声も 対話重視の「新井式」、カープが変わる秋
プロ野球広島は、新井貴浩・新監督(45)が「対話路線」で動き出した。21日に終わった宮崎・日南での秋季キャンプでは、自ら選手に歩み寄る姿が目立った。
新井監督は来季の12球団の監督の中では最年少になる。その若さと巧みな言葉の力で、チームを一つにまとめようとしている。
「お前たちが思っているより、俺はお前たちみんなに期待しているから。好き嫌いで起用とか絶対にしない。カープって大きな家の中にお前たちがいるから、家族同然だと思っている。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して頑張ろう」
第2クール途中の14日に合流した新監督は、「第一声」からムードメーカーとしての本領を発揮した。
リーグ3連覇を果たし、新井監督が現役引退したのが2018年。その翌年からチームは4年連続Bクラス(4位以下)と低迷が続く。上位進出のためには世代交代も課題の一つだ。若手中心の秋季キャンプは、だからこそ重要だった。
4年目の二塁手、羽月隆太郎が個人練習でノックを受けていると、ジャージー姿で見守る新井監督は「キク(菊池涼介)に勝つ自信はあるか?」と尋ねた。
「勝てます。いや、無理です……。勝ちます!」と羽月。「いいじゃないか」と新井監督は満面の笑みで応えた。
ブルペンでは5年目の右腕、遠藤淳志に対し、低めに制球する意識にとらわれず、高めも使って持ち味のストレートを生かすように助言した。
その意図をこう説明した。「理想を追い求めて練習をしていくのは大切だけど、理想を追い求めるあまりに自分が窮屈になってほしくなかった」
新井監督による積極的な対話の効果もあってか、日没近くまで厳しい練習に臨む選手たちの顔つきが明るかったのが印象に残った。
羽月は「冗談交じりかもしれないけど、モチベーションになる。練習するのが楽しみ」と言えば、遠藤は「ちょっと楽になった。自信を持って投げていいのかな」と口にした。
来季のチーム構想にかかわる選手起用の面では、すでに動き出している。
今季は主に三塁手で出場し、チームで唯一の全試合出場を果たした6年目の坂倉将吾を、来季は「本職」の捕手に専念させる。
坂倉の打力は捨てがたく、会沢翼との正捕手争いで出場機会が減る可能性もあるが、新井監督が坂倉本人の意向をくんだ形だ。
「アツ(会沢)も『やるぞ』となり、チーム内に競争が生まれる」と期待する。
新井監督が就任会見で掲げた広島伝統の機動力野球の復活など、戦術面の充実を図るのはこれからだ。ただ、この秋にチームを活気づかせ、下地を整えたとは言えるだろう。(辻健治)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。