31歳でパーキンソン病「死んだ方が…」 絶望した私が選んだ治療法
「右足、どうしたの?」
横浜市の小笠原名未(おがさわらなみ)さん(49)の体に異変が現れたのは、31歳のときだった。
人に会うたび、そう言われるようになっていた。自分では気づかなかったが、右足を引きずっているという。
長男・凌(りょう)さん(25)と次男・渓(けい)さん(24)はまだ小さく、毎日、育児と家事に追われていた。
思えば、右手にも違和感があった。卵を菜箸で溶けないし、歯を磨くのももどかしい。文字もうまく書けない。
気になってあちこちの整形外科や脳神経外科で検査をしてもらったが、異常はないという。
多少の不便を感じながらも、「右手がダメなら左手があるさ」と夫の孝(たかし)さん(58)に冗談を言い、以前と変わらぬ日常を送っていた。
2005年の春、小学校の入学式を3日後に控えた渓さんがネフローゼ症候群の治療で4カ月も入院することになった。
ひとりでは心細かろうと、病院内のコンビニでアルバイトを始めることにした。
「せっかく病院で働いているんだから、前から気になっていた症状を診てもらおう」
そう思い立ち、整形外科を受診すると医師に言われた。
「若年性パーキンソン病でしょうね」
思わず聞き返した。
「ぜんぜん体が震えていないのに、パーキンソン病なのでしょうか?」
幼いころ、近所にパーキンソン病のお年寄りがいた。いつも手を震わせている様子が目に焼き付いていた。
神経内科でも診てもらうと、やはり若年性パーキンソン病だろうと言われた。
「いずれ寝たきりになります」
医師の言葉が、自分のことを言っているとは信じられなかった。
「先生、治るんですよね?」
いちるの望みをかけて尋ねたが、きっぱりとした口調で言われた。
「いいえ、治りません」
まだ若いのに。子どもたちも…
- 【視点】
難病に指定されているパーキンソン病は加齢とともに増える病気で、多くは50歳以上で発症します。しかし40歳未満で発症する人も1割ほどおり、「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。米国の俳優マイケル・J・フォックスさんは、キャリアの絶頂期だった2