多様な表現世界は「迷宮」 砂澤ビッキ、過去最大級の回顧展

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平岡春人
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 巨木を彫った抽象作品などで知られる造形家、砂澤ビッキ(1931~89)の過去最大級の回顧展「砂澤ビッキ展」が、札幌市中央区北海道立近代美術館で開かれている。巨細にわたる木彫だけでなく、絵画、デッサンなど280点を展示。多彩な表現世界を通して、通底する精神性を感じられる。

 会場に入ると並ぶのは、チョウやエビ、サケ、タンチョウなどの生き物の木彫。「宝箱」が付属するものもあり、まるでおもちゃのようだ。表面には独自の文様がびっしりと施されている。生き物の関節部分や箱のふたは回転軸構造になっており、動くようになっている。

 ビッキとは幼少時の愛称でアイヌ語でカエルを意味する。北海道東部の阿寒湖畔(現・釧路市)で土産物店を営みながら木彫りを作り、生き物に関心を持っていた。

 〈砂澤ビッキ〉 1931年、北海道旭川市アイヌ民族の両親のもとに生まれる。22歳で阿寒湖畔に移住し、土産物店を営み工芸品を制作。冬に神奈川県鎌倉市に滞在し、フランス文学者の澁澤龍彦らと付き合い、モダンアート協会展などに木彫を出品するようになる。札幌に拠点を移した後、78年に音威子府村の旧小学校にアトリエを構える。83年にはカナダに3カ月間滞在し、先住民族と交流。現地の木材で次々に彫刻を作った。89年、57歳で死去。

 「ビッキは『工芸』と『彫刻』を区別しない造形家。触ったり動かしたりして楽しめる作品も多い」。久米淳之上席専門員が解説する。

 ビッキはただ見て鑑賞するだ…

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