試合を重ねるたびに、顔つきがりりしくなっていった。
今や阪神タイガースに欠かせない存在となった、湯浅京己(23)のことだ。
昨季までの3シーズンで1軍登板はわずか3試合。それが今季は59試合に登板して2勝3敗、防御率1・09。45ホールドポイント(43ホールド)をマークし、最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。
特に注目したい数字が被本塁打数だ。
58イニングを投げて、わずかに「1」本。
これは驚異的な数字だ。
たとえば新人王を争いをした巨人の大勢は、57イニングで7本を浴びている。
湯浅は7月1日、バンテリンドームナゴヤであった中日戦の八回、アリエル・マルティネスに高めに浮いた146キロを2ランにされた。
これが今季唯一の被本塁打になるわけだが、湯浅はこのままで終わらせなかった。
翌日、今度はそのキューバ出身の右打者を152キロで空振り三振に打ち取った。
「やり返そうと。打たれた内角高めで打ち取りたかったのもあった」
やられたらやり返す。湯浅には、そんな気持ちの強さがある。
それはプロ入り前に培われた。
三重県尾鷲市から福島・聖光学院高に進んだが、入学直後から腰痛に悩まされ、1年半近く野球ができなかった。
親友の仁平勇汰さんに「俺も…
- 【視点】
■新人王は逃したけれど 注目された新人王争いは、巨人の大勢投手に軍配が上がりました。 大勢が209票に対し、湯浅は74票。思ったより大差がついたなという印象です。 大勢が大卒1年目のルーキーだったことに対して、湯浅は入団4年目