取組の後で変わった 王鵬の優しげなまなざしもライバルへの言葉も

内田快
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(24日、大相撲九州場所12日目 ○王鵬 はたき込み ●豊昇龍)

 ゴツン。頭同士が当たる鈍い音がした。2敗の王鵬と、1敗の豊昇龍。優勝に向けての大一番に立ち合いから火花を散らす。

 一歩前に出たのは王鵬だった。豊昇龍に押し返されるが、左後方に下がりながらはたき込み。立ち合いの一歩があった分、後退してもなお、俵までは余裕があった。

 「めちゃくちゃいい立ち合いができた」。22歳は優勝争いのトップに並んだ。

 関脇豊昇龍とは同学年。ともに2018年初場所で初土俵を踏んだ。

 やわらかな雰囲気の王鵬と、熱さを感じさせる豊昇龍は対照的なライバルだった。王鵬は「負けたくはない」と、かつてはその気持ちを素直に語っていた。

 2日前の言葉は違った。「番付が全然違うので特に気にしていないです」

 関脇に対し、前頭13枚目。対抗意識を公言するには、地位が離れすぎていると感じていたのではないか。

 だが、この一番に勝ったことで状況は変わった。

 「(ライバル意識は)みなさんが思っているほどではないと思いますけど」と前置きしつつ、「いざ戦うとなると負けたくないですね」。

 心の内を隠さなかった。

 自身の祖父は昭和の大横綱大鵬、豊昇龍のおじは朝青龍。この背景も相まって、2人に次代の相撲界を担う両輪になってほしいというファンの期待は大きい。

 取組後、豊昇龍が悔しさを隠さずに鋭い眼光を投げかければ、いつもは優しげな目をする王鵬もこれまでにないほど精悍(せいかん)なまなざしで応えた。

 記憶に残る、幕内での初顔合わせになった。(内田快)

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