人が育てたライチョウ「N11」、タフさに注目 那須どうぶつ王国

小野智美
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 栃木県那須町の「那須どうぶつ王国」に、動物園で生まれ育ったにもかかわらず、野生に戻せる可能性のあるライチョウがいる。6歳の雄で、名前は「N(エヌ)11」。これまでの飼育の常識を覆し、スタッフを驚かせている。

 野生復帰の大前提は、野生の母鳥に育てられたこと。母鳥から高山植物を消化するための腸内細菌を受け取らなければ山では生きていけないとされているからだ。ヒナは生後まもない一時期、母鳥の盲腸から出るフンを食べることで腸内細菌を受け取る。

 園が8月に中央アルプスに返した雌3羽も、野生の母鳥に育てられた。この母鳥は全長40センチ未満の体格ながら、盲腸の長さは43センチもあった。園内で飼育されたライチョウの倍以上の長さだ。それだけ多くの腸内細菌を持っていた。

 今年春に雌3羽のうち1羽とつがいになったN11は、卵のときに北アルプス乗鞍岳長野県岐阜県)から上野動物園に連れてこられた。那須どうぶつ王国にきたのは2年前。人工孵化(ふか)・人工育雛(いくすう)で育ったので腸内細菌を受け取っていない。

 ところが、つがいとなった雌との生活で、雌のために用意された高山植物を食べ始めた。それまで食べたことはなかったが、下痢を起こすこともなかった。中部大学の調査によると、N11の腸内細菌の状態は雌たちに近づいているという。

 また、野生のライチョウが体内にもつ原虫のコクシジウムへの耐性もあるようだ。体長が0・1ミリもない小さな寄生虫だが、体内で増えすぎると衰弱死をもたらす。野生のライチョウはうまく共存している。

 N11は雌とつがいとなってコクシジウムに感染した。園は体調不良にそなえ、医療措置を準備したが、飼育リーダーの荒川友紀さんは「本当に元気です。ピンピンしています」と驚く。

 環境省は種の保存のために2015年から乗鞍岳のライチョウの受精卵を動物園に移し、いまは国内の7カ所で59羽を「保険個体」として飼育する。N11もそのうちの1羽だ。佐藤哲也園長は「継続研究が必要だが、保険個体を山へ返すすべがあるかもしれない」と期待を寄せる。

 「N11はスーパースターですね」と言う記者に、園の広報担当・宮地さくらさんは「N11が来てから繁殖の成功率もぐんと上がりました。雌たちと良好な関係を築く『スーパーパパ』です」と話した。(小野智美)

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