第3回マンション名から消される「恒大」 不動産危機を招いた習氏の強権
中国不動産市場の失速の引き金ともなった、中国恒大集団の経営危機。問題が表面化した昨秋から1年以上経ったいま、まるで騒動を「封印」するかのような現象が目に付く。
北京市中心部から北東に車で1時間ほど行った広い地にあるマンション「恒大上和府」。工事現場の販売所を訪れると、あらゆる看板や資料から「恒大」の文字が黒塗りされたり消されたりしていた。
販売所の男性によると、恒大の資金繰り悪化を受け、マンションの工事現場では多くの作業員が辞めていき、工事は一時中断。その後、中国政府の意向を受けた国有企業「中国中信集団」傘下の投資会社がマンションの建設工事を引き継いだという。看板から名前が消えたのはそのためだった。
落日の象徴はこのマンションだけでない。
広州市内で建設中だった巨大サッカースタジアムは、恒大が所有するサッカークラブの本拠地となる予定だった。総工費120億元(約2400億円)、建築面積は約30万平方メートル。10万人を収容できる世界最大のスタジアムと話題を呼び、152室のVIPルーム、さらに最高級の「VVIP」ルームを16室完備。子どもの遊び場やレストランなど様々な施設も入る壮大な計画だった。結局は今年8月、地元の深圳市政府に建設用の土地を返却することで、計画から撤退することが決まった。戻ってきた一部の資金は債務の弁済に充てるという。
債務の弁済には、創業者の許家印氏の私財も投じられた。許氏は2019年に富豪ランキングで世界22位、中国3位にまで上り詰めた人物。香港メディアなどによると、すでに許氏は香港の別荘や広東省広州・深圳両市にある豪邸、プライベートジェット数機を売却したり、担保にとられたりした。また、恒大の株式も売却。拠出した私財は合計で170億元(約3300億円)にも上るとされる。
約2兆元にまで膨れあがった恒大の負債。中国の不動産危機の原因は何だったのでしょうか?「不動産業界を嫌っている」といわれる習氏が行った三つの厳しい規制の内容に迫ります。
「未曽有の冬の時代、影響は想像を超える」
恒大の負債は約2兆元(約4…