「ロボット・セラピー」という言葉をご存じだろうか。ペット型のロボットにふれあうことで、認知症の症状改善に寄与したり、災害や紛争の被災者の心のケアに役立ったりするという。その代表格が、産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)が製作したタテゴトアザラシの「パロ」。日本が誇る介護ロボットとまで言われる「効果」とは――。
産総研の研究室には、開発当初からの歴代のパロが所狭しと並んでいた。ピンクの毛並みのパロの頭をなでると、つぶらな瞳をぱちくりさせながらこちらを見つめて「キュー」と鳴いた。もふもふとした手触り。40歳過ぎの記者も思わず「かわいい……」とつぶやいてしまった。
体全体やひげや鼻の中などに触覚、視覚、聴覚などのセンサーがあり、人工知能(AI)を内蔵する。外の環境を認識し、なでると声を出して喜び、名付けて繰り返し呼びかけると学習して反応するようになる。動作をさせるうちに個体ごとの個性が出てくる。
抱いたり話しかけたりすることで利用者が癒やされ、心のケアにつながるという。
パロの生みの親で上級主任研究員の柴田崇徳さんによると、現在30カ国以上の病院や介護施設などで7千体以上のパロが稼働している。各国での臨床試験や治験で、パロとふれあうことで認知症患者のひとり歩きなどの周辺症状が改善する効果が確認されている。話さなくなった認知症患者がパロとふれあうことで他人と会話をするようになったという報告もあるという。
米国での試験では、パロを用…