「戒めの手すり」が語る雑踏事故の威力 梨泰院の悲劇、再発防ぐには

有料記事

小川聡仁
[PR]

 1本の曲がった手すりを、兵庫県警が保存している。同県明石市で11人が亡くなった21年前の歩道橋事故の現場にあったものだ。今年また、多くの命が韓国・ソウルの梨泰院(イテウォン)で奪われた。悲劇を繰り返さないために何が必要なのか。

 県警本部18階にある雑踏警備対策室。部屋の窓際に、長さ約70センチに切り取られたステンレス製の手すりが置かれている。

 それを支える約16センチの鉄の平板は根元から約30度、ぐにゃりと曲がっている。

 「歩道橋に殺到した人たちの負荷で曲がったものです」。雑踏警備対策室長の佐野善宣さんは言う。

明石歩道橋事故

2001年7月21日夜、兵庫県明石市のJR朝霧駅南側にある歩道橋で起きた。市主催の花火大会で行き来する観客らが押し合いになり、0~9歳の子ども9人を含む11人が死亡し、247人が負傷した。

 対策室は、署や警察学校での研修の際に手すりを持ち出し、群衆の威力を伝える教材に活用してきた。

 県警が手すりを明石市から譲り受けたのは、事故から4年後の2005年。当時、地域部長だった田山映二さん(76)が事故を戒めにしようと考えたからだ。

 事故で県警は、雑踏対策の警察官を歩道橋に配置していなかったことなどから批判を浴びた。05年6月、遺族らが起こした民事訴訟で、神戸地裁は県警に損害賠償を命じた。

遺族から繰り返し言われたこと

 判決後、県警トップの本部長と並んで遺族に謝罪した。怒りに震え、涙を流す遺族から新聞紙を投げつけられた。「自分が事故で家族を亡くしたらと思うと……。当然のことです」。約1時間半、ただただ頭を下げ続けた。

 遺族から繰り返し言われたこ…

この記事は有料記事です。残り952文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【期間中何度でも15%OFF】朝日新聞モールクーポンプレゼント