さあ、27日は、サッカー・ワールドカップ(W杯)1次リーグE組第2戦。日本の対戦相手はコスタリカ。コスタリカと聞いて、選挙用語の「コスタリカ方式」を思い浮かべたが、コスタリカとどんな関係があったのか……。専門調査員としてコスタリカに2年駐在したことがある東京女子大の尾尻希和教授(ラテンアメリカ政治)に話を聞きました。
――「コスタリカ方式」の由来は、コスタリカでは連続再選ができないこと、なんですね。多選の多い日本からでは想像できませんが、どんな人が議員になるのですか。
多いのは弁護士です。ほかに起業家やジャーナリスト、たたき上げで社会運動を続けてきた人、もちろん勤め人などなど、いろんなキャリアの人がいます。
コスタリカの国会議員の選挙制度は、比例代表制だけです。多様なキャリアを積んだ人が政党から候補に選ばれて議員になり、4年の任期を終えたらまた元の仕事に戻り、1人の市民や党員として社会に貢献する、という文化です。政治家だけというキャリアを持つ人や、二世議員はすごく少ないです。日本は会社員の場合、退職しないと立候補できないケースが多いですよね。そのカルチャーだと、多様な議員は生まれにくいだろうと思います。
――でも、4年の任期では、日本でいえば「1年生議員」。政治の世界では、存在感も示せないまま終わってしまいそうです。
国会議員は定員57人とわずかで、一人ひとりに存在感があります。目立つ人は必ずすぐに出てきます。4年の任期のうちに、大統領候補に躍り出る人もいます。市民が街で偶然見かけた国会議員に気がついて話しかけ、普段から不満に思っていることをまくしたて、国会議員がメモを取りながら聞く、という光景もあるほどです。市民の政治参加の意識はとても高いです。
――続けて立候補ができなければ癒着や汚職も起こりにくそうですね。
いいえ、とても多いです。本人が望まざるとも、当選した瞬間からいろいろなところから声がかかります。疑惑が浮上すれば、たとえ法律的にグレーで裁判で有罪とすることが難しいケースだったとしても、選挙で制裁を受けることが多いです。
――27日、1次リーグE組で日本と対戦します。サッカーの人気はどれほどですか。
カトリックに次ぐ「国教」みたいなものです。南米はどの国もそうですが、試合のあった日はニュースを見なくてもどのチームが勝ったか分かります。大声で騒いだり、車から身を乗り出して、旗を振ったりして喜んでいますから。先日、現地の報道をチェックしていたところ、「前回も前々回も、W杯の期間中、試合を見るために仕事をサボる公務員の『病欠』が増える」という注意喚起の記事が出ていました。
開幕前は、同グループで旧宗主国、同じ言語圏のスペインにどうやったら勝てるか、という話題がほとんどでした。コスタリカの人はスペイン王室が好きで、大統領就任式などに、スペインから王族が来るとアイドルのような扱いです。
残念ながら日本のことはまっ…
- 【視点】
W杯のような国際大会では、対戦する相手がどういう国なのかを知るきっかけにもなる。戦術などの特徴だけでなく、対戦国の歴史や現実を知れば学校で学ぶよりも身近な問題として意識されてスッと頭に入ってくるはずです。スポーツは楽しむだけでなく学ぶ機会に