高安の「目」が語る経験と自信 初優勝、今度こそいけそうな気がする
松本龍三郎
初優勝は、もう目の前にある。無冠の大関経験者、高安が賜杯(しはい)レースのトップを守ったまま、千秋楽へ向かう。
単独首位で土俵に上がった14日目。優勝の可能性を残していた輝が相手だった。
立ち合い、今場所さえわたる右かちあげを繰り出した。いったん土俵際まで押し込みながら、粘る相手に引いてしまい、ピンチを招いた。回り込むようにして後退。前のめりになった輝をなんとかはたき込んだ。
決して褒められた内容ではない。それでも白星は重ねた。
「ちょっと引く場面はあったが、そこは修正したい」。取組後は冷静に自身の動きを見つめ直し、反省点にも触れていた。
リモート取材の終わり際、その表情が印象的だ。「頑張ります。ありがとうございました」と最後の言葉を発し、頭をぺこりと下げた後、カメラにぐっと視線を送ってから立ち去った。
決定戦で屈した春場所、千秋楽まで食らい付いた秋場所。この2場所は終盤では目に力強さがなく、不安を押し殺しているようだった。
今年3度目となる優勝争い。培ってきた経験がある。今はたくましさ、落ち着きを感じさせる。
千秋楽は1差の阿炎との対戦が組まれた。敗れれば、優勝決定戦にまわる。本割一発で、決めきりたい。(松本龍三郎)
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