銭湯大使の高校教諭に聞く意義 今こそ貴重な「ゆるく、つながる」

聞き手・藤谷和広
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 【千葉】11月26日は「いい風呂の日」。しかし今、多くの銭湯が経営難に陥っている。自宅に風呂を持つ世帯が増え、スーパー銭湯も台頭するなか、銭湯の存在意義とは何か。県立佐倉高校教諭で、県銭湯大使の後藤泰彦さん(42)に聞いた。

 ――県内の銭湯では9月、入浴料金が従来の450円から480円に値上げされました。

 それほど経営が厳しくなっているということです。

 銭湯は1946年にできた物価統制令が今も適用されている唯一の業界で、知事が入浴料金の上限額を指定します。このような仕組みになっているのは、銭湯が「住民の日常生活において保健衛生上必要なもの」とされているからです。

 少なくなってきたとはいえ、自宅に風呂がない世帯もあります。銭湯の福祉的な役割からすれば、値上げは望ましくありません。一方、事業者側からは燃料費の高騰などの影響で、「これ以上もたない」という悲鳴が上がっていました。

文化として残したい「銭湯」

 ――いつごろから銭湯に通っているのですか。

 もともと温泉が好きだったのですが、10年ほど前に、顧問だった部活の合宿で利用してから、県内にどんな銭湯があるのか興味を持つようになりました。でも、まとまった情報がない。じゃあ自分で調べてみようと思ったのです。

 独自に作成したアンケートを県内60カ所(当時)の銭湯に配布し、回答を論文にまとめました。サウナや露天風呂の有無のほか、番台式かフロント式か、浴室の壁にどんな絵が描かれているか、後継者がいるかどうかまで尋ねました。

 ――どんな発見がありましたか。

 一つとして同じものはないということです。アンケートだけではなく、自分の足で県内すべての銭湯をめぐり、多様性を実感しました。ただ、重労働なので子どもに継がせたくないという経営者も多いようです。すでに銭湯がなくなってしまった地域もあり、文化として残したいと強く思うようになりました。

 それ以来、SNSで銭湯の魅力を発信してきました。グーグルマップ上に県内の銭湯が表示される「ちば銭湯マップ」も作成し、営業時間などの情報を日々更新しています。

 ――スーパー銭湯があれば十分ではないのですか。

 役割が違うと考えています。不特定多数の人が利用するスーパー銭湯に対し、銭湯は地域を感じられる場所です。

 私は銭湯で必ず、番台さんに「お風呂いただきます」と声をかけるようにしています。客同士で自然と会話が生まれることもある。「あの人最近見ないけど大丈夫かな」とか。お年寄りにとっては、見守り機関でもあります。

 お風呂に入っているだけですから、お互いに深入りすることはありません。ゆるく、つながる。そういう場所って今、貴重なんじゃないでしょうか。(聞き手・藤谷和広)

     ◇

 ごとう・やすひこ 1980年、我孫子市生まれ。大学院で文化地理学を専攻。2017年、県公衆浴場業生活衛生同業組合から県銭湯大使に任命された。これまでに46都道府県、約1100カ所の銭湯をめぐってきた。

     ◇

 〈銭湯〉 公衆浴場法の「一般公衆浴場」。娯楽要素が強いスーパー銭湯などは該当しない。県の統計によると、県内には最大393カ所(1967年)あったが、現在は37カ所(後藤さん調べ)。入浴料金は2006年に385円から420円となって以降、段階的に値上がりし現在は480円。

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